kanariya022006-05-11

え〜、なんとか執筆間に合いました。
今回がギリギリですんで、明日は別の内容を挟むと思います。


今日のははっきりいっちゃえば繋ぎですね。
いよいよシルフィ戦、ラストに向けてって感じです。
ですから次回に向けて、ワクワクな内容。
どう考えても次回が楽しみなわけでですが…w
がんばって書かないと。
とりあえずは今回、その次回にワクワクが待ち受けてるのか知るためにもご覧下さい。


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アクアバーストエンドの直撃。
超質量で消滅させる技故、防ぐことは不可能なはず。
それなのに、消滅されなかった。
正確には力ずくで消滅を防いだということ…なのだろうが。
リン姫(なんて…常識離れしたやつだ……)
リン姫がそう思うのも当然だろう。
いや、リン姫のこの反応ですら淡白とも言える。
普通ならこんなのを敵に回したと思えば戦意喪失は間違いないのだから。
しかし、消滅を逃れたにしろダメージは大きいらしく動き出すには時間がかかるようだ。
機体修復、治療を行っているようで攻撃を仕掛けてくる様子はない。
深い闇の渦が取り巻き、姿は見えず、ただただ嫌な予感だけがする。
エスタ「シルフィ…あなた……」
特にエスタには…。
リン姫「つぅ…ぅ…?」
激痛に悩まされながらもエスタの声はうっすら耳に届いた。
エスタ「あっ…!」
エスタ(リミッター解除の…)
リン姫がリミッター解除の負担で苦しんでいることにようやく気づく。
姫がそのことを表にしなかったのでわからなかったようだ。
エスタ「………」
エスタが心配していることにリン姫は気づく。
リン姫「だ、…大丈夫」
やせ我慢だ。
エスタ「少しお待ちを…」
リン姫「っ……?」
『ボワァァァァン』
リン姫を包む水。
青い色をしたその水はエストレイアではなく、E・フィールドにいるリン姫を直接包んでいる。
それは柔らかく、緩やかで穏やかなもの。
リン姫「これは…」
リン姫(体が…)
エスタ「癒しの水。リミッター解除でかかる負担、大丈夫ですか?」
リン姫「え、ええ…」
エスタの使った水魔法のおかげでリン姫に痛みは走らなくなった。
リン姫の治癒魔法をも越える急激な痛みを引き起こすリミッター解除効果。
それを外から防いでしまうエスタはなんとも凄いものだ。
エスタ「そう、良かった」
リン姫(凄い…これが究極兵器の力)
先ほどから究極兵器に入り混じって戦っているため、彼女達が凄いということを感じなくなっていたが、桁違いだなと改めて感じさせられる。
異空間位置にあるE・フィールドに干渉することなんて大魔法使いのリン姫からしても理解できないことなのだから。


エスタ「私があなたを守ります」
リン姫「エスタ…」
エスタ「今は私のパートナー…ですもの」
リン姫「パートナー…」
エスタ「あっ、いえ…何でもありません」
エスタ(何を言っているのでしょう?)
自分で何を口にしているのか分からない。
1万年と生きてきてパートナーと呼べる存在はただ一人だけだった。
勿論それはシルフィン=アビスなのだが。
人を、しかもこうして共に戦い始めて間がたっていない幼い少女をパートナーと呼ぶなんて…。
自分でも不思議な気持ちになっていた。
気づいていないが感じている。リン姫の持つ不思議な魅力を。
リン姫「ふふっ…」
エスタのその一面はリン姫には心地よかった。
熱かったり冷たかったりという姿は見てきた。
緩やかで水のようなエスタの姿はよく見る。
が、こう暖かな姿を見るのは初めてだったから。
リン姫「ええ、パートナーよ。よろしく…」
弱々しくもウインクをするリン姫。
意識がしっかり保てていない状態なので、これが精一杯。
決してエスタに見えるはずのないウインク。
だが、エスタは口調からかそれを感じ取っていた。
エスタ「…はい」
パートナー。
懐かしく、そして心地よい響き。
リン姫をパートナーと認めるのにどこか暖かみを感じていた。
戦いの中で、リン姫の想い、熱意を受け止めた結果なのだろう。
それは言葉では決して言い表せないもの。
リン姫「この魔法はどれぐらい?」
エスタ「え…っと、長時間持つように設定しておきましたつもりなのですが…ええと、普通の方なら3ヶ月は持ちます」
リン姫「妾なら?」
エスタ「…3分程度かと」
リン姫「み、短いな…」
エスタ「それだけ魔力耐性が凄いのです。エストレイアや魔極の瞳のことを考えるともっと短い可能性もあります」
リン姫「うっ……」
エスタがそばにいる分、もう一度魔法を使ってもらうことも出来る。
が、そんな都合よく行くとは限らないし、何度も世話になるのはリン姫としても気持ちのいいものではない。
できれば時間内に戦いを終えたい所…。
エスタ「とりあえず今は回復に専念してください」
リン姫「わかった」
そう返答するもとっくに治癒魔法を使って身体を癒している。
流石に死にかけの状態でおしゃべりなどしていられないので。
しかし、安らかな時は続かない。
酷く悲惨なモノが待ち受けるのだから。


夜空の空気が変わる。
風は止み、音一つしない。
その静けさはなんとも不気味だ。
空気はピリピリと張り詰めたものに。
二人はその変化を感じ取っていた。
そして、それを引き起こしてる者へと視線を向ける。
暗闇の中から現れるだろうと予期して。
そして、現れた。
意外な、想定していなかったモノが。
予想だにしなかったモノが。
シルフィ「キィィ…サァァ…マァァ…ラァァァ!!!」
おぞましき声。
低く、その悲鳴にも聞こえる声。
エスタ「……!?」
リン姫「……!?」
言葉も出ない程の驚き。
二人の目に映ったのは巨大な羽の生えた化け物の姿。
それはキメラではない。
キメラに人が混じったような…。
キメラはライオンの頭にヤギの胴体、ヘビの尻尾を持つ生物。
ヴァンヒューラもそれに漏れず、その姿をしていた。
だが今は、大きな人の腕、人の足がある。
人のような顔に角が生えている。
どちらかというと人にキメラを足したような印象を受ける。
色はぐちゃぐちゃで黒に近いグレー。
見ていてとても気持ち悪い姿と色をしていた。
ヴァンヒューラなのだろうが…。
エスタ「…………」
リン姫「なに…あれ?」
エスタ「ヴァンヒューラの融合能力…」
リン姫「え…?」
エスタ「シルフィ…」
リン姫「融合した……ってこと?」
エスタ「ゴーレムと…融合を…」
シルフィとヴァンヒューラが融合したものということだ。
能力的な融合ではない、完全な融合。混ざり合ってしまったもの。
ゴーレムと究極兵器が。
寒気を感じる。酷い酷い寒気。
シルフィの放つ魔力というものとは違う。
それには既に慣れた。
恐怖から感じるものでもない。
化け物と化したシルフィの形相を目の当たりにしたショックからだ。
リン姫にもショックだった。
シルフィを強く思うエスタにはどれ程痛いものか…。
本人も気づいていないであろう、涙を流していたことを。
リン姫「エスタ…」
エスタ「…もう、ためらっちゃ駄目ですよね」
リン姫「エスタ?」
エスタ「後戻りできるって、なんとかして助けだしたいって心のどこかで思ってた」
リン姫「エスタ…」
エスタ「でも、…無理みたいです。無理みたいで…」
リン姫「………」
エスタ「リン姫、お願い…」
リン姫「………」
エスタ「彼を…殺すのを…手伝ってください」
声が震えている。
涙が止まらない。
先ほどまでも殺す気で戦ってはいたが、心の奥底までそのつもりで戦えていたわけではない。
シルフィを想い、また共に生活できたら…そう思い改心してくれることを願っていた。
でも、今はそうは思えない。
思えなくなった。
今のシルフィの姿を見て。
エスタ「今の彼を見てると辛い…多分、彼自身が…誰よりも」
リン姫(エスタ…)
エスタにはシルフィの痛みがわかる。
だから、安らかに眠らせてあげたい。
心の底から思った。
リン姫にはエスタがどれ程苦しんでいるのかわからない。
ただ、わからない程に苦しんでいる。
そのエスタよりシルフィ自身は苦しんでいる。
それはよくわかる。
エスタ「お願いします…」
リン姫「ええ…、シルフィのためにも」
辛そうなエスタを少しでも楽にするために、無理に笑顔を振り絞る。
その微笑みはエスタにはありがたかった。
エスタとシルフィ、二人の悲しき愛はリン姫にもよくわかっていた。
だから、エスタの望むようにしてあげたい。
リン姫はそう願う。
それがシルフィにとっても幸せであると思うから…。
エスタ「…ありがとう」
リン姫の気遣いに、優しさに心から感謝した。


ヴァンヒューラが動き出したのを確認すると、エストレイアをその場に残し、セレナレナは前進する。
治療に専念させるべく、今はリン姫に戦わせられない。
その考えの元、前に出て自分に攻撃を引き付けよう…と。
前へ踏み出したセレナレナに襲い掛かる、新ヴァンヒューラ。
右手から光輝かせる。
シルフィ「エェェェ…スゥゥ…タァァァァァ!!」
その恐怖を感じさせる声と共に、攻撃は放たれる。
エスタ(なにこれ…!?)
異質なる攻撃。
灰色の何かが光線の如く飛んでくる。
魔法なのか物理攻撃なのか判別がつかない。
からして気持ち悪く、確かめたいとも思えない。
それを危険と判断すると回避行動へ移る。
バリアを14枚も張り、万全な体勢で。
しかし、
エスタ(なっ、伸びた!?)
その灰色の何かが速度を加速させてきたのだ。
バリアと衝突し、砕いていく。
やがて、ヴァンヒューラの攻撃はセレナレナにヒット。
14枚も張っていたバリアを全て突破したのだ。
エスタ(威力が上がってる…強くなってる!!)
直撃にはならず、肩をかすっていくだけだったが、かわしきれなかった。
エスタ「ぎぃ…」
耐える。
『ドロッ…』
かすったセレナレナの肩に付着した泥のようなもの。
それは肩を焼き溶かす。
エスタ(ヘド…ロ? 溶かす攻撃っ!?)
気持ち悪さが付きまとう。
今までのシルフィからは考えられない攻撃。
エスタ(くっ、でもっ!!)
そして反撃に出る。
ためらいはない。全力で。
エスタ「スプラッシュ・ニードル!!」
エスタ(シルフィ…あなたはなんとしても私が…)
氷の針…等ではなく、規模からして氷のランスが大量にヴァンヒューラ目掛けて降り注ぐ。
セイオーン・レーンの大技として用いられた大型ランス、それと同じサイズの氷が大量に。
このセレナ・レナにかかれば、セイレーンの必殺技も針の一本でしかないのだろう。
想いのこもった攻撃。
しかし、ランスの多くはバリア粉砕に際し、消滅。
バリアを何とか通過した数本も魔極の瞳の無効化能力で全てかき消されてしまった。
ヴァンヒューラへのダメージは無しである。
そして、次はシルフィの攻撃。
待つ時間を与えてはくれず、即座に攻撃が繰り出されている。
しかし攻撃の前触れもなく、ヴァンヒューラ自身に動きはない。
ふと、横を見ると…。
黄色い光の球が辺り一面に。
広範囲に展開されている。
これは…、
エスタ(これは…魔法爆弾!? まずい、リン姫も…)
ふわふわと浮くその魔法爆弾。
それらはセレナレナもエストレイアも巻き込むものだろう。
エスタ自身だけならともかく、リン姫の方はまだ治療中。
防御対策が全く取れていない。
エスタ(間に合え…)
急いで力を溜める。
この攻撃を防ぐための魔法を。
エスタ(間に合え!)
爆発まで時間がない。
黄色い光は揺らめき、今にも爆発しそう。
時間がない。
エスタ(出来たっ!!)
エスタ「水面鏡…水の波紋よ、響けっ!」
シルフィ「…」
空だというのに、宙に水の波紋が広がる。
水面に水の雫が落ちた際に起きるあの波紋のような現象。
ゆらゆらと揺れる空。
セレナレナの一帯は水ならぬ、空気の波紋が広がっていたのだ。
エスタ「…ラァァァァァァ!!」
エスタの大きく高らかな声。
それは空の水面に響き、一帯を揺らす。
まるで水の中にいるような感覚だ。
『ボンボンボンボンボンボン…』
魔法爆弾は次々と小爆していく。
この波紋魔法のせいだろうか? 爆弾の爆発が異様に小さい。
水中で爆発しているかのように…。
爆発直後、次なる攻撃が…。
魔法爆弾は時間差のためのもの。
防がれても次の攻撃はフリーとなる。
バリア一つ張れていない状態。
爆弾に魔法を使用したばかりで行動が取れない。
シルフィ「…マァァ…ダァァァァ!!」
エスタ「くぅ…」
ヴァンヒューラの右手が光る。
再び放たれようとしている。
さっきのヘドロ攻撃が。
バリアを14枚も貫通したあの攻撃が…。
リン姫「チャージ完了…」
エスタ「えっ?」
背後から聞こえる声に振り向くと、目に飛び込むのは大きな赤い魔法陣。
エスタ(これはっ…)
リン姫「フレア…バァァストエンドォォォォォォ!!」
『シュゥゥゥゥゥゥゥゥ…』
シルフィを巨大な赤いシャボン玉が包み込む。
それが凝縮していって…。
同時に、闇が一帯に広がっていく。
闇が空間を支配していく。
直撃を受けたヴァンヒューラは逃れられず、引きずり込まれていった。
シャボン玉の中の闇の中心部、ブラックホールへと。
リン姫(闇に覆われてるのに…術式が妙に読み取れる)
色の質みたいなものなのだろう。
フレアバーストエンドの黒色は完全な闇空間。
その中で若干光を放つ術式は見えなくはない。
見えやすいわけではないが…。
無効化することも不可能ではないだろう。
もっとも今のシルフィを倒せるなどとは二人とも思ってはいない。
術式が見えにくい分、無効化か軽減に時間がかかってくれれば…と思っている程度。
とりあえずは次の策を考えるためにと、二人はその場を離れることにした。


リン姫「あいつを倒すには…」
エスタ「フレアバーストエンドとアクアバーストエンド、両方のバーストエンドを同時にぶつける…ですね」
リン姫「ええ、あの技は超質量の圧縮技。火も水ももはや関係ないからね、重ねることは出来る…けど」
エスタ「問題はいかに2つを同時に当てるか…」
そこが問題だ。
バーストエンドを同時に当てたとしても、シルフィはどちらかを魔極の瞳で無効化してしまうだろう。
もう1つを喰らっても先程のように倒せはしない。
両方を無効化されないようにしつつ当てなければならないのだ。
しかし、バーストエンドはタメがある技。
これを使用するには他の魔法が一切使用不可能になる。
さっきのように闇空間の魔法等も使用できないのだ。
複合が不可能な以上、魔極の瞳を封じるのは不可能。
口を閉ざす二人。
どうすれば倒せる?
どうやったらシルフィを止められる?
エスタには勿論思い浮かばない。
一方でリン姫は、
リン姫「…ってあれ?」
エスタ(…?)
リン姫「…そうだ」
あることに気づいた。
その発見に自分で驚いている。
リン姫「魔極の瞳で無効化できるのは、なにもあいつだけじゃないんだ…」
エスタ「えっ?」
エストレイアは前進をストップ。
セレナレナも吊られて停止する。
2機は向き合って、
リン姫「私も…エスタもできるんだよ、無効化は…」
エスタ「えっ? でも、シルフィの魔法は高度で完全無効化なんてとても…」
それに気づいた時、リン姫の顔が変わる。
リン姫「ふふ〜ん、そりゃ一人じゃ無理だよね」
笑みを浮かべる。
リン姫「でも、こっちには二人いるんだから」
ここで真顔になる。
リン姫「二人で無効化するのよ、あいつの魔法を」
エスタ「…!!」
今まではほとんど片方で戦っていた。
バーストエンドでしか倒せないことを考えていたためだ。
どちらかが囮になりシルフィと抗戦、どちらかがバーストエンドを撃つ…と。
だから、二人で同時に攻めるという案はなかったのだろう。
リン姫「なんでこんな簡単なこと気づかなかったんだろ?」
エスタ「でも、そんな簡単には!」
リン姫「今の私達なら息も合わせられるよ」
エスタ「………」
エスタ(この子の自信は何?)
こちらも魔極の瞳でシルフィの魔法を無効化できる。
そのことに気づいた時、リン姫の雰囲気が変わっていた。
先ほどまでの緊張感に包まれた様子はない。
冷静…というわけでもない。
どちらかというと、息抜きしすぎているというか間が抜けているような様だ。
能天気といってもいいほどかもしれない。
リン姫「そういえば舞踏会の途中だったのよね、私」
エスタ「舞踏会?」
エスタ(何を…?)
舞踏会の最中に、エリアとキサラが訪れた。
そこで、リオ・パレスに入らないかと勧誘され、断ったのが今に至る経緯。
事の始まり。
リン姫「ええ、だからダンス踊りたくなってきたかも…」
エスタ「踊りですか…」
リン姫に何か考えはあるのだろうが、意味はわからない。
とりあえず、話をあわせるようにしよう…と、エスタ。
リン姫「よしっ、じゃあ、舞うか!」
エスタ「舞…う…?」
リン姫の口にすることがどんどんとわからなくなっていく。
圧倒的な力を持つシルフィに気が狂った…というわけでないのだろうが。
リン姫「エストレイアとセレナレナ、共に同性能でリミッター解除済み。テンポを合わせることもできるわ」
精霊機の性能はほぼ同じ。
操者によって性能は変化するし、攻撃技等も変わってくるので、完全に同じとは言えないが…。
リン姫「なら、あいつの攻撃も防御も…ううん、全てを無効化出来ちゃうよ」
エスタ「全てを…」
エスタ(っていうか…、この子性格が変わったような…)
エスタの言うとおり、リン姫の雰囲気が激変している。
おかしくなったからではない。
完全に勝利を確信したのだ。
もはや圧倒的勝利を感じ取っている、だからこう自然な振る舞いを出来るようになった。
油断をしている…というわけではない。
エスタには理解しがたいことだ。
窮地なはずなのに、笑顔を振りまける。
優しい顔ができるリン姫が。
リン姫「あいつは何も出来ない、何もさせない。そして、チャンスを見計らってバーストエンドを…」
エスタ「当てる」
リン姫「ええ…ふふっ、絶対いける」
エスタ(そんなことが本当に…?)
本当に可能なのか?
疑問は感じる。
しかし、不安はない。
リン姫「テンポは…そうねぇ」
エスタ(でも、この子なら…)
今までの戦いでリン姫が信頼に足る者と理解できている。
だから、不安は抱かない。
むしろ、安心できる。
絶対成功するとすら思える。
リン姫「アン・ドゥ・トロワ…3拍子で♪」
テンポは3拍子。
リン姫「3拍子…え〜っと…」
エスタ「ワルツですね」
この段階で、エスタも話についていっている。
リン姫のやりたいようにやらせてあげたいとすら思えるほどになっていた。
もっとも自分に策がないからだとか、自分がリン姫に命令するのも忍びないからとかいうのもあるからだが。
リン姫「そうそう、ワルツ♪」
一つ間を置き、少し真顔に。
リン姫「炎と水のワルツ…ね」
エスタ「炎と水の…ワルツ…」
エスタ(この子のような人間は初めてです。暖かくて心強くて…)
そんなエスタを無視してリン姫は話を進める。
リン姫「あなたと手を合わせれば…敵なんていないのに。もっと早く気づけばよかった」
エスタ(希望…というものを感じさせてくれます)
リン姫の可能性を確かに感じ取っていた。
と、同時に、
エスタ(この子の希望を…こんなところで終わらせてはいけない!!)
リン姫を失わせてはいけない。
なんとしてもこの子だけは守らなければ…と強い使命感を感じる。
未来のある子だから…と。
リン姫「ふぅ…」
一息つき、
リン姫「さぁ、行くよ、エスタッ!!」
手を高らかに挙げる。
拳をグーにし、
リン姫「さぁ、超反撃スタートォ!! 炎と水のワルツ、始まるよぉぉ!!!」
元気一杯に勝利の合図を唱えた。
動き出した2機。
赤と青の流星は対になって空を舞う。
流星は光の火の粉を吹き出し、その火の粉はキラキラと宝石のように輝いていた。
赤と青の光のイルミネーションは美しく夜空を彩る。
まるで花火のように鮮やかに…。