kanariya022006-04-22

はい、みんなのフロア大戦、夢の異世界編の後編、いよいよ公開です。


ゴーレム姫ワルツ編スペシャルな今回。
まだまだ魅せてくれますよ、セラ達が。
では、どうぞ〜♪
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夜が明け、朝日が昇る。
夜明け時。
ブリッジルーム。
レン「目標発見、水の都です」
鬼頭「うむっ、そのまま接近だ」
目の前に広がる景色。
舞台は水の都へ。


ジャッキー「ああ、様々な苦難を乗り越え、遂にここまで来たな」
果てしない旅、数々の苦難を乗り越えて遂にここまでたどり着いた…そんな心境になってるのが一人。
ヘレナ「苦難って…買い物しただけじゃない」
冷静なツッコミだ。
ジャッキー「何?」
沈黙。
この旅を考え込む。
ジャッキー「……しまったぁ、何もやってねぇじゃん!!」
全然冒険などしていない。
マックス「なにをいまさら…」
ジャッキー「おいおい、ファンタジーだぜ? 剣と魔法の世界だぜ?」
ジャッキー「魔王と戦わなくてどうするんだよ!?」
マックス「魔王なんていないッスよ」
ヘレナ「…いてもリーン姫辺りに倒されちゃってるわね」
ジャッキー「ぐっ……ならドラゴンだっ!!ドラゴンならいるだろう!?」
セフィー「確かに、キサラさんが以前そのようなことを…」
キャス「いるの、ドラゴン!?」
セフィー「はい、いるようです」
ジャッキー「よっしゃ〜!! なら行くっきゃねぇだろ!!」
マックス「…一人で勝手に行って、一人で死んできてくださいッス」
階級上なのに、ツッコミは容赦ない。
烈火「ドラゴンか、燃えるじゃねぇか。俺がKOしてやってもいいぜ」
なぜか烈火が乗り気。
セフィー「確かキサラさんは子供の頃、ドラゴンと友達だったようですよ」
烈火「なっ…」
キャス「ジャッキー、倒す程度じゃ駄目だね〜♪」
ジャッキー「くそぉぉぉ、じゃあもっと強いのは? キサラやリーン姫さえ寄せ付けない奴ぅ!!」
ピタッと沈黙。
ジャッキーのその一言は周囲の空気を冷たくした。
皆答えが出ているからだ。
そしてそれと戦う可能性があり、これより戦闘態勢にも入る。
皆がそれを瞬時に意識してしまったが為に、ピリピリとした空気へと変わった。
ジャッキー「へっ…?」
ひみろ「それなら…」
セフィー「ええ、それなら…」
ネネコ「魔法使いが…、あのリンちゃんが最強と認める存在…」
それとこれから会いに行くのだ。
江藤『水の都へ到着する。各自出撃準備に入れ!!』
江藤の声が艦内に響き渡る。
『ビュゥゥン』
宙に浮かぶウインドウ。
そこには目標地点、水の都の映像が流されている。
丸く覆われた山。
その中には湖が広がり、中央には神殿がぽっつりと浮かんでいる。
この湖の下には太古の街、古代の街が並ぶという。
そして、その街を誰よりも大切に思い、一人守り続ける者。
大切に思うが故に、この水の都への進行を許さぬという者。
ひみろ「水の都の…エスターシャ=ローネ」
ゴーレム、セイオーンとはすでに一度抗戦している。
圧倒的な迫力、強さを誇る敵。
攻略はした。
とはいえ、油断は出来ない。
あの時はリン姫が、キサラがいたのだから…。


水の都、神殿内。
エスタ「侵入者確認……」
神殿内、外の景色すら見えない位置で、気配を捉える。
ネオンのやっていたのと同じようなことを。
エスタ「ヘヴンズクラス…いや、魔法使いですら無い…」
エスタ(…ここ数日私の心はどこかむなしく…悲しい)
元々おっとりと静かなエスタだが、今回は何時にもまして静かだ。
落ち着いているはずなのだが、どこか落ち着きが無く弱々しい。
エスタ(何かの前触れ? その何かを引き起こすのは…この者達なのでしょうか?)
嵐の前の静けさ…それをエスタは感じ取っていた。


ひみろ「く…ぅ……」
寒気が襲う。
ヘヴンズクラス…セラの近くにいると発生する現象。
セラが無意識に放出する魔力は魔法耐性の無い者には毒で、侵食してくる。
古代にて戦争をするために作られた究極兵器のその力はリン姫達を遥かに凌ぐ。
結果、まだ遠く離れたこの位置からでも寒気を感じさせるのだ。
ひみろ「これが…またきついんだよな…」
ラビ「私達は魔法使えるんだけど…それでも来るんだよね、これ」
りゅい「まったく…セフィーが羨ましいな」
辛そうな表情。
耐え辛いものなのだろう。
セフィー「………」
セフィー(ですが、不思議な威圧感は感じられます…。これが…)
同時に、神殿より姿を現す女性。
セフィー「エスターシャ=ローネ…」
青い髪の女性…麗しきその顔は真っ直ぐにV−TUGへと向けられている。
エスタ『…聞こえますか?』
テレパシー。
V−TUGに乗る者全員に届く。
エスタ『私の声が聞こえますか?』
この場を支配する者の声。
押し寄せる寒気とは裏腹に、優しくゆるやかで暖かみのあるその声は全ての者を呑む。
これがこの世界最強の者の力。
この古代の街を守護する者の力…。
クラノス「聞こえて…いる」
エスタ「………」
一息つく。
ゆったりと焦らず、自分のペースで…。
エスタ『用件を…聞きましょう』
ジャッキー「用件〜?」
エスタ『あなた方がここへ来た理由…目的を…訳を……』
クラノス「あ、ああ…説明する。聞いて欲しい」
意外な対応、話を聞いてくれるというのは大助かりなことだ。
戦わなくて済む。
元の世界に帰れるのだから。
クラノス達はエスターシャ=ローネに深く説明した。
異世界から来たこと、元の世界に帰ろうとしていること、リン姫に言われてここに来たこと等細かに…。


クラノス「と、そういうわけで…」
エスタ『なるほど…わかりました』
全てを聞き終え、一息つく。
話を全て整理しているのだろう。
エスタ『闇の干渉…ですね』
ネネコ「え…?」
エスタ『闇に守られ、闇に食われた…』
ひみろ「闇に…」
ミコト「守られ…」
烈火「闇に…」
ホフル「食われた…?」
意味がわからない。
エスタ『攻撃する側も闇ならば守る側も闇、そして、両者の衝突が…』
ひみろ「あっ……」
気づいたようだ、エスタのこの発言の意味に。
ラビ「どうした?」
ひみろ「ゲルタリーエクトとイリアレウス、どちらも闇の力を…」
エスタ『今回の事のきっかけですね』
それはこの世界へ来たきっかけ。
グースィのゲルタリーエクトは死力を尽くし、闇の黒いエネルギーを暴発させ、リン姫とイリアレウスが決死の思いでV−TUGを守った。
その時の話。
エスタ『あの子の意識が闇の力と共にあなた方に流れ込んだのでしょう』
ひみろ「あの時…」
クラノス「それでこの世界に…」
リン姫の、魔法の世界へとやってきたのだ。
ひみろ「でも、どうして? 俺達の知ってるリン姫じゃなく、未来のリン姫の世界へ?」
エスタ『きっと、あの子の夢…なのでしょうね』
ひみろ「夢…?」
ネネコ「そっかぁ…なんとなくわかるなぁ」
エスタ『ふふっ、あなた方が見てるこの世界が…本当に夢なのか…幻なのか…はたまた現実なのか…定かではありません』
ホフル「夢の世界…」
エスタ『ですが、あの子の望む世界は…望む未来は…』
ネネコ「多分、こんな世界なんだよ!!」
ひみろ「ああ、だろうな…」
リン姫の夢か?
それとも、本当の未来の世界なのか?
それは定かではない、しかし暖かい世界には変わりはない。
幸せな世界であることには…。
夢ある世界であることには…。
エスタ『さぁ、帰りなさい。元の世界へ…案内いたします』
優しい瞳、夢のある話の中で、いつの間にか寒気は消えていた。
エスタの温もりにいつしか包まれて、温かい気持ちになっていた。
いよいよ元の世界へ戻れる。
すっきりとした気分で世界へ戻れることに、皆が喜びを抱く。
そして、
ひみろ「ありがとう、エスターシャ=ローネ!!」
エスタへの感謝も忘れない。
エスタ「ふふっ…」
しかし、突如、
『ピキューーーン』
エスタ「……っ!?」
凄まじい魔力を感じる。
あまりにも強力で、それは…エスタをも凌ぐもの。
『ゾクッ…』
ヘレナ「あ…ぅ……、これ…は…」
エスタの時以上の寒気。
どこからか殺気すらも感じ取れる程不快なもので、震えが止まらない。
いかなる化け物なのか?
…いや、ここまで来ると自然現象か何かであり、人のものとは思えないだろう。
それ程に凄まじい。
しかしその魔力に、流れ出るものにエスタは覚えがあった…。


???『なんだ、この変な塊は?』
テレパシー、男の声だ。
周囲に人影はない。
神殿にも、湖の上にも、空のどこにも人の姿は見当たらない。
でも、声だけはする。
エスタ(どこ? どこに!?)
エスタですら、発見できず。
???『…邪魔だ』
そうテレパシーが来た瞬間。
『ドカーーーン!!!』
エスタ「っ!!」
V−TUGが大爆発を起こす。
激しく揺れるV−TUG。
高度を落としていく。
艦に大きな傷穴が見える。
そこからは炎が激しく燃え上がっていた。
突如現れた謎の者に攻撃されたもの。
ゲイル「ぐあぁぁぁぁ!!」
エルティ「きゃぁぁぁぁぁぁ!!」
急落下するV−TUGに、立っていることが出来ない。
湖目掛けて…艦の体勢を立て直すにはとても間に合わない。
このまま衝突する…。
と、衝突目前、
『シュゥゥゥゥゥポワン』
ピンク色のシャボン玉のような丸いものがV−TUGを包み込む。
フワフワと浮いている。
V−TUGはそのピンク色の中で浮いていた。
湖に接してはいない。
巻き上がっていた炎もいつの間にか消えている。
キャス「なに? どうなったの?」
烈火「…なんだ?」
バニ「魔法…?」
ひみろ「エスターシャ=ローネのか…?」
そう、エスターシャ=ローネの魔法である。
全長1kmを超える超大型戦艦V−TUGを包む、更なる巨大な風船を彼女は作り出したのだ。
そして、とりあえず1つの難は超えた。
問題は、その超巨大戦艦を一瞬で落としたもう一人の者。
クラノス「とりあえず助かったのか…」
岩城「まだだ、まだ狙われている」
鬼頭「レン…今の攻撃、分析できたか?」
レン「………」
鬼頭「レン、どうした?」
レン「映って…ません」
クラノス「なっ…!?」
鬼頭「なんじゃと!?」
レン「攻撃が…見えないんです」
クラノス「なっ、見えない攻撃だと!?」
岩城「でも、喰らっているぞ」
レン「見えるのは着弾時の爆発だけで…」
クラノス「それでは対処のしようが…」
鬼頭「くっ…これでは皆に出撃してもらってもやられるだけじゃ」
エスタ『心配しないで、あなた達は必ず元の世界へ帰します』
エスタからのテレパシー。
こちらの状況を把握しているのか。
クラノス「これは一体!?」
エスタ『彼の攻撃は見えません。姿さえも…見えません』
クラノス「見えない!?」
岩城(彼…? 彼女は知っているのか?)
エスタ『ですから、戦おうなんてしないで下さい』
小声で呟く。
テレパシーではなく、小声で。
エスタ「極眼、魔極の瞳…」
エスタの眼光が鋭くなる。
何かの眼力か?
ともかく、先ほどまで見えなかったモノが見えるようになっていた。
その眼は敵を捉えている。
目の前で浮かぶ敵が…。
エスタ「シルフィン…アビス……」
それがその者の名。
うっすらと透けるような淡く白い翼で、宙に浮かぶ男。
閉じた瞳、白い髪、エスタと同じように白い布を髪にぶら下げているのが特徴。
見えるのはエスタただ一人。
エスタからそう遠くない位置に男はいた。
そして、エスタの声は男に届く。
テレパシーを使わなくとも届く。
無言と沈黙。
二人は目をそらさず、じっと見つめ続けている。
シルフィ…、エリア達の話では究極兵器と呼ばれる者。
それはエスタと同じ。
つまり、この二人は共に究極兵器ということになる。


エスタ「ここ数日の胸騒ぎは…あなただったのですね」
二人は知り合いで、深い関係のようだ。
シルフィ「………」
エスタ「目を…覚ましてしまうなんて……」
シルフィ「………」
エスタ「どうして……」
今はもうテレパシーは使っていない。
エスタの声が聞こえるのもシルフィただ一人だけ。
シルフィ「俺はお前を迎えに来た…」
エスタ「えっ!?」
それは予想外の言葉。
エスタはこのことを全く予期していなかった。
シルフィ「来い、俺のところへ」
エスタ「ど、どういう…こと?」
シルフィ「リオ・パレスという組織を作っている。世界征服をするための組織をな」
エスタ「世界…征服……」
エスタの心の何かが崩れる。
シルフィ「ああ、俺達の世界を作るんだ。だから…お前も来い」
エスタ「世界征服を……」
シルフィ「………お前にまで強要はしない。お前は俺のそばにいてくれればいい」
エスタ「…………」
シルフィ「来い、エスタ!」
エスタ「…………」
上手くしゃべれない。
上手く言葉が出ない。
エスタ「ありがとう…でも、でも…ごめんなさい……」
シルフィ「………」
エスタ「今のあなたにはついていけない…」
シルフィ「………」
エスタ「私は…私は…あなたを救いたい…」
シルフィ「………」
エスタ「昔のあなたに戻って欲しいの…」
目は潤み、今にも涙がこぼれそう。
エスタ「ごめんなさい、シルフィ……」
シルフィ「………」
シルフィは無言で、泣き崩れそうなエスタに手を差し出す。
エスタ「…?」
シルフィ「無理やりにでもお前を連れて行く」
エスタ「シルフィ!?」
シルフィ「悪いな」
エスタ「あっ……」
『バシィ』
一瞬。
光が放たれ、そして…。
エスタは赤い水晶に閉じ込められていた…。


『バシャァァァァァン』
エスタが結晶に封じられた瞬間、エスタの魔法が解ける。
V−TUGを包んでいた風船は弾け、V−TUGは湖に着水した。
シルフィの姿が見えない一同には何が起こっているのかわからない。
アルクス「何が起こっている?」
リーン「わかりません!!」
わかる者はいない。
シルフィ「…破壊するか」
ターゲットはV−TUGに。
魔の手が迫る。
ネネコ「ねぇ、あの赤いの…エスタさんじゃないの?」
ひみろ「なに!?」
わかるのはエスタが赤い水晶に閉じ込められていることぐらいだ。
ただそれは絶望を与えるもの。
ラビ「えっ…、なんで…あんな中に?」
ジャッキー「おい、やられたってことか?」
キャス「そんなぁ!!」
どうするべきか、どうしたらいいのか…判断できない。
事態もよく分からない現状。
敵の姿すら見えないのではどうしようもない。
そして、一同は危機を感じる。
やられる…と。
殺される…と。
そして、シルフィが手を前に差し出す。
見えない攻撃、それは撃った瞬間に死が待ち受けるというもの。
そして…、
シルフィ「死…」
死ね…そう口にしようとした。
死が訪れようとした。
した瞬間…、
シルフィ「…?」
V−TUGに変化が表れる。
『ブワァァァァァ』
V−TUGが光り輝きだしたのだ。
魔法の類ではない。
何が原因かはわからないが、光っている。
キリト「なん…だ?」
ミコト「なに?」
光に包まれ、透けていく。
世界から消えていく。
シルフィ「……………」
そんな消えゆくV−TUGをシルフィは無言で眺め続けた…。





ネネコ「ん……んぅ?」
眠りからの目覚め。
目を覚ますネネコ。
以前とは違い、今度はベッドに眠っていた。
ネネコ「ここは…」
そこは自室。
ネネコの部屋。
とりあえずドアを開き、部屋から出る。
通路には誰もいない。
ネネコ「夢…?」
異世界の出来事は夢だったのか?
なら、これも夢ではないのか?
もはや現実との判別がつかなくなっていた。
???「…ではない、寝ぼけるな」
ネネコ「えっ?」
声に釣られ、横を見るとそこには…、
リン姫「やっと目が覚めたな」
ネネコ「…リンちゃん」
腕を組み、壁にもたれかかっているリン姫がいた。
14才の、よく知るリン姫が。
ネネコ「リンちゃん!!」
リン姫「あ、おいっ!?」
ネネコはいきなりリン姫に飛びかかり、抱きついた。
ネネコ「よかった…」
リン姫「………」
それはリン姫が無事だったことへの素直な気持ち。
素直な喜び。
リン姫「何を言っておる。何時までも目を覚まさぬお主たちにこっちはどれだけ迷惑したか…」
お主“たち”…とついている以上、ネネコだけではないようだ。
しかし、リン姫は怒っているわけではない。
怒っているような内容だが、ネネコの頭を優しくなでている。
リン姫なりに心配していたのだろう。
ひみろ「無事でよかった」
そんなこんなしてる内に、いつの間にかひみろまで。
リン姫「お主まで…」
心配してたのはこっちだぞ…と言いたげな姫。
ひみろ「それはそうと…どうやってオレ達は意識を取り戻したんだ?」
ふと浮かぶ疑問。
見えない謎の敵に襲われて、絶体絶命という所で目が覚めた。
はたして、ただ運が良かっただけなのだろうか?
リン姫「ああ、お主達を目覚めさせたのはあいつのおかげじゃ」
ひみろ「…あいつ?」
リン姫「ついて来い」
そう言って抱きついているネネコを抱え、歩き出す。


ブリッジルーム。
部屋に入ると、そこは明るい世界。
ラビ「ひみろぉ〜♪」
バニ「ネネコちゃんもぉ〜♪」
ラビバニが駆けつける。
そして、抱きついてくる。
りゅいやセフィー、そして皆の姿がそこにはあった。
ネネコ「皆無事だったんだ」
ラビ「うん、もうちょっとでやられるところだったけど…無事だったよ」
どうやら皆が皆、同じ夢を見ていたようだ。
そして、同時に夢から覚めた…。
ひみろ(皆が同じ夢を…? 本当に夢なのか?)
ひみろ「それで、誰がオレ達を…?」
リン姫「ん? ああ、今は…いないようじゃな」
ブリッジ一帯を見渡すが、目的の人物はいないようだ。
???「探してるのは私?」
誰かが背後からリン姫のほっぺをぎゅっと摘む。
リン姫「うわっと…」
大慌てで背後へ振り返る。
そこにいたのは、
ネネコ「エル〜!」
ひみろ「エル…」
海賊衣装の少女。
el、もといエルだった。
エル「リン姫、まだまだ甘いですよ」
リン姫「うぬ〜、お主!!」
エル「あなたがもっとしっかりしていれば今回のことは起きなかったのですから」
エルの説教モード。
リン姫「うぐっ………」
どうやらリン姫を完全に手に取れるらしい。
ひみろ「そうか、お前が…助かった」
皆を起こしたのはエルだった。
ひみろはエルが自分を目覚めさせてくれたことを素直に感謝する。
エル「ふふっ、私がいない間に大変なことになってたんだね」
ひみろ「ああ、かなり」
エル「でも、今回は私にも不思議なことが起こったし…」
ひみろ「不思議なこと?」
エル「ええ、突然皆が寝たきり状態になってるのがわかって、それを起こせるのが自分しかいないって思ったの。……なんでだか」
自分で馬鹿げたことを言ってるなといった感じ。
口にしながら自分で呆れている。
ひみろ「…?」
彼女が言っていることはひみろには分からない。
勿論リン姫も理解不能である。
だが、
ネネコ「あっ…」
ネネコはあることを思い出した。
『心配しないで、あなた達は必ず元の世界へ帰します』
エスターシャ=ローネがテレパシーで言っていたことを。
リン姫「何かあるのか?」
ネネコ「ううん、なんでも…」
ネネコは言わない、真実を。
ネネコ(約束を…守ったんだ)
リン姫「ふわぁ〜あ、とりあえずは…無事解決じゃな。妾は疲れたから休む」
眠そうに目をこすりながら。
エル「あっ、私も少しゆっくりしてくるね」
そう言って、リン姫とエルは出て行った。
部屋を出て行く二人の後ろ姿を見終えて。
ひみろ「一つ気になることが…」
ラビ「ん?」
ひみろ「あれは本当に夢だったのか? エスタを襲った見えない奴、あれは架空の者なのか?」
もしあれが現実なら、あんなのが敵として出てくるなら…それが心配でならない。
セフィー「それは…私達にはわかりません」
バニ「異世界のことだし、それが分かるのってリン姫とエルだけなわけでしょ?」
ラビ「あっ、そっかぁ。…でも、あの二人なら大丈夫だよ」
りゅい「気に食わないところも多いけどな。…でも、まっ、弱くはないしな」
ひみろ「そう…だな。あいつらなら…大丈夫だよな」
ネネコ「うん、あの二人なら…」
リン姫の世界のこと、未来のことは誰にも分からない。
しかし、彼女達は明るい未来を確信していた。
頼りになる仲間だから…。





水の都。
静かで緩やかな波の音だけがする。
シルフィもいない、エスタの赤い水晶もない神殿。
???「なんとか、分身体を作ることは出来ました…」
そこには青い髪の少女がいた。
???「シルフィ…なんとしても、私はあなたを止めます」
そして、それは新たなる戦いの始まりを告げる…。




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お疲れ様でした〜。
あとがきや中の細かい設定なりの解説は明日に回します。