kanariya022006-04-20

はい、今回はみんなのフロア大戦夢の異世界編の中編です。
ドキドキワクワクはまだまだ続きますよぉ〜。


前編はしっかり見てくださいね。
見てないと意味がわかりません。
そして、前編見た方、お楽しみ今回はあの連中が出てきます。
あの連中がどういう絡みをするのか、期待してお読みください。
そして、今回も各キャラの楽しい物語があります。
ではでは、お楽しみください
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この世界では大抵の店で物を買い取ってくれたりする。
旅人や商人、移民者が多いからというのが大きな理由。
一行はひとまず、街に行きお金を手にすることから開始した。
ほとんどの者は自分の物を売ってショッピングに走っていたりする。
なんせ、異世界
珍しい物に手を出したいという欲が起きるのも当然であろう。
リーン「この世界って宝石安いのね〜」
エルティ「売るのも買うのも安かったね。でも水晶はかなり高かったし…」
リーン「ふふっ、私一杯買っちゃった♪」
エルティ「私も。ほらっ、すごいよこれ、エメラルドォ♪」
エルティの抱える箱の中には大きなエメラルドのネックレス。
輝きを放つそれは自分達の世界だと手にするのは大変な代物だ。
二人は大変ご機嫌で街道を歩いていく。


水晶は魔法干渉が強く、様々な利用法がある。
見た目の美しさ、綺麗さも加わってこの世界ではかなり需要があるのだが、魔法干渉が大きい分加工生産が困難なのが特徴だ。
利用価値が高く、出回ってる分破格というわけには行かないが、基本的にはどこに行っても引き取ってくれる便利な代物でもある。
傷が多少ついていても問題にはならないほどに。
逆に宝石類は魔法干渉が少ない。
魔法世界のこちらでは錬金術も一般的利用されており、宝石類の生成はさほど難しいものでもないからだ。
簡単に手に入る分、注目される存在でもないため、欲しがる人も少ない。
結果、流通も少なく、安値で取引されているのだ。
この手はキリト達の世界とは逆で、宝石が欲しい女性陣からすればうれしい話だ。
ただ、水晶の類を持っていなければ話にならないが…。
他に売れるものといえば魔法アイテムだが、そんなもの持ち合わせているはずが無い。
ちなみにリン姫の持つ護符。リン姫のネームバリューと世界一の結界師の札ということで、かなりの高嶺で売れる。
リン姫からすると紙さえあれば簡単に作れる代物なのだが、金に困らないリン姫が一般に流すことも無いので滅多に一般市場に出回らない。
リン姫から札を一枚でももらってる者がいればよかったのだが、どうやらいないようだ。


公園、ベンチに座り込んでいる仲良しメンバー。
ネネコ「それにしてもさっきのリンちゃん、凄かったね〜」
ひみろ「うん?」
ネネコ「すっごい綺麗だった」
バニ「へぇ〜、私よく見えなかったんだよね〜、人だかりのせいで」
りゅい「どんなだった?16才だっけ?」
ひみろ「ああ、しゃべり方も変わってて、ん〜と…」
ここで口が止まる。口にするべきかどうかで迷ったのだ。
口に出来ないのではなく、自分がしていいのかどうか、なんとなくしたく無いような気もするし…という微妙な気持ち故に。
ネネコ「女の子らしくなってたよ」
りゅい「い〜、あのお姫様が!?」
身近で14歳のリン姫を見てる者にすれば驚きだろう。
見た目は女の子だったが、男っぽく振舞っていたリン姫。
それがちゃんと女らしく振舞っているということに。
バニ「あ〜ん、もう見たかったなぁ〜」
ひみろ「まぁ、確かに2年であれかというほど変わっていたな…」
ひみろは納得していない。
同じ16才、同一視していた者があんなレディになっていたことを。
今こうやって冷静に考えるとどこかショックを受ける。
ラビ「ねぇねぇ、セフィー。そのリン姫の写せない〜?」
セフィーの記憶装置を利用して16才リン姫を拝もうという魂胆。
セフィー「すいません、私もよくは見れて無いもので…」
ラビ「あう〜〜〜」
りゅい「はぁ、仕方ない。もういっちょ買い物行くか」
ラビ「うん、いこいこ〜」
ベンチから立ち上がるラビ達に、ひみろとネネコはまだ座ったまま。
セフィー「ひみろさん達は?」
ひみろ「もう少し休憩するよ」
セフィー「わかりました。行ってきますね」
ひみろ「ああ」
そうして、二人を残し買い物を続行する。
二人は黙り込んだまま、穏やかに流れる風をしばし楽しんでいた。
ひみろ「リン姫の世界…か」
ポツっと呟く。
ネネコ「うん。リンちゃんの…世界」
のんびりとのどかで、感傷に浸っているわけではない。
ただ、二人はリン姫の住むこの世界を楽しんでいた。
リン姫がこの世界に住んでいるんだなということをじっくりと考えめぐらせていた。
ひみろ「良いところだ」
ネネコ「うん、良いところだね」
この世界で生活していきたいというわけではない。
ただ、こういう世界もあっていいな、こういう世界もありだな…そんなことを感じる。
ひみろ「良いところだな…」
ネネコ「良いところだね…」
そういう気持ちを抱きながら、二人はただひたすらこの世界に流れる風を味わっていた。


ミコト「烈火さん、まだまだありますよぉ〜!!」
後方、高く積まれた箱の荷物を抱えた烈火に手を振るミコト。
荷物…買い物はミコトのものだろう。
烈火はその付き合いをさせられているといったところ。
烈火「くそっ…なんで俺が………」
岩城はクラノス達と共に艦に残り、作戦会議を行っている。
結果、手の空いている烈火がミコトの買い物の手伝いをする羽目になった。
ミコト「あっ!!」
前方で何かを発見。
ミコト「ゲイルさぁぁぁぁん、ルシーエさぁぁぁぁん!!!」
ミコトの目に映るのはゲイルとルシーエの姿。
二人でデートをしていたのだろう。
向こうの二人からすれば良い迷惑かもしれない。
特にルシーエにとっては…。
しかし、ミコトはそんなこと一切気にせず、二人を呼びかける。
鉢合わせになった以上、無視するのも忍びないから…というのもあるのかもしれないが。
ゲイル「ん?」
ルシーエ「あ………」
声は届き、二人もミコトの存在に気づいた。
ルシーエはどこかショックな顔をしている。
二人の時間が終わってしまったような…そんなところだろう。
二人の元に駆け寄るミコト。
ゲイル「ミコト…と、あれは烈火か?」
ミコト「あ、はい。荷物持ちしてもらっちゃってます」
ゲイル「そう…か」
ミコト「お邪魔でしたか?」
ゲイル「いや…まぁ、そんなことはないぞ」
ルシーエ(お邪魔です〜。邪魔邪魔邪魔ぁ〜。…もうなんでぇ〜)
大声で叫びたいぐらいの心境…だが、口に出すわけにもいかない。
ブルブル震えながらも堪える。
ミコト「あ、そうだ。さっきのお店で聞いたんですが、この先にオルゴールのお店があるらしいですよ」
ルシーエ「オルゴール?」
突然の振りでキョトンとするルシーエ。
ミコト「はい、魔法で作られたオルゴール。不思議な音色がするらしいです」
ゲイル「へぇ、それはいいな」
ルシーエ「え、あっ、じゃあ行きましょう」
ミコト「はい♪」
魔法のオルゴールという未知なる物への興味でルシーエも落ち着きを取り戻した。
ミコト「ってことで、烈火さん早くしてくださぁ〜〜い!!」
再び後方へ振り返り、烈火を誘う。
高くまで積まれた荷物を落とさぬようにと歩く烈火は速度が遅い。
烈火「くそぉ、ちょっとは持てよ、お前ぇ!!」
しかし、その言葉はミコトには届かぬものとなる。


アクセサリー店、店内。
キャス「悪いね、イールク君。荷物持たせちゃって」
キャス達もお買い物中。
イールク「あ、いいえ。これぐらい大したことないです」
荷物といっても袋一つ分。
それなりに買い物しているのだが、キャスのは小物に集中している。
そのために、たいした大きさにはなっていないようだ。
マックス「そろそろ艦に戻ろうよ」
キャス「そうだね」
店員「嬢ちゃん達、観光かい?」
店員が話しかけてきた。
キャス達の衣装を見て、それから出た疑問だろう。
マックス「あっ…と、そんなところっス」
店員「そうか。大丈夫だとは思うけど、気をつけたほうが良いよ」
キャス「ん? 何に?」
店員「最近この辺りで暴れまわってる奴がいるらしい」
マックス「…………」
キャス「…どんなの?」
二人の表情がぎゅっと引き締まった。
店員「さぁねぇ。だが、気をつけるに越したことは無い、会ってもすぐに逃げることだ」
キャス「ふ〜ん。……ありがと〜」
キャス達は店を出た。
イールク「大丈夫かな〜?」
ちょっと怯えムードのイールク。
キャス「大丈夫だよ。私達は空飛んでいくわけだし、関係ないって」
マックス「………」
マックス(でも、もしセラなら…ゴーレムなら襲われかねない…)
楽天思考のキャスに対し、マックスは重く感じていた。
この世界で強い者。ゴーレムを使う強い者達を何人も知っているが為の不安でもある。



夕方頃。
買い物を、ショッピングをエンジョイしたクルー達も艦へ戻っている。
そして、出航。
この世界への干渉をできるだけ避けるべく、艦を停止させている時は森などの中へ。
飛行している時はできるだけ上空を、かつ街の少ない人の少ない地方を選んで飛行していった。
航海は順調。
このまま、エスターシャ=ローネのいる水の都までは何事も無く進めるものと皆予想していた。
しかし、荒野の中。
高く高く飛行するその艦をしっかり捉え、眺める影が…。


???「なんだあれ? あんなものを飛ばすなんてなぁ〜」
一つ目の影は男。
黒い衣装を身にまとう赤髪ポニーテールの男。
???「凄い技術だな…。空中要塞とどちらが上だか…」
こちらは二つ目の影、女。
黒い髪で不思議な東洋の衣装を身にまとっている。
???「確かに凄い…ですね。私の空中要塞より上かもしれない…」
三つ目の影、これも女。
綺麗な金髪に青い衣装をまとう。
暖かそうな格好だ。
???「………」
四つ目、最後の影も女。
踊り子風の衣装はこの夕日の荒野では寒そうに映る。
しかし、ものともしていない様子。
白い髪の黒い肌。
瞳は鋭く、見る者を貫く勢いだ。
男「どうする?」
黒髪女「狩るなら私がやる…ただし一人でな」
黒髪の女の発言は主に白い髪の踊り子に向けての発言のようだ。
恐れているのだろうか?
どこか強調している風に取れる。
白髪女「………」
金髪女「放っておきましょう」
金髪女の発言。
この中では彼女が主導権を握っているようだ。
黒髪女「いいのか?」
特に驚いた様子はない。
ただ、納得はいかないらしい。
金髪女「はい。今は作戦実行前です。リーン姫やエスターシャ=ローネに怪しまれるようなことは避けるべきですから」
男「大事の前、事は起こさぬようにってか」
金髪女「その通りです。あれが何かは分かりませんが、どこかの国の兵器であるのは間違いないでしょう」
金髪女「ともすれば、今うかつに落としたことが原因でリーン姫に警戒されるという可能性もあります」
金髪女「…まっ、そもそもあんなのに構ってる場合でも無いのですけどね」
論理的、説明慣れしているのか冷静に分かりやすく解説する。
黒髪女「…まぁ、いい。それはそうと、これの進路…」
金髪女「ん?」
黒髪女「ネオンの向かった街…どっちだ?」
金髪女「う〜ん……」
考え込む金髪女。
よくは覚えて無いらしい。
金髪女「確か…あれの向かってる方角でしたね、海岸都市ですので」
男「ってことは…ネオンと鉢合わせになるかもってことだな」
金髪女「そうですね。あの子がどう動くかは知りませんが、何かあれば撃墜してくれるでしょう」
黒髪女「海岸…か」
金髪女「海岸…です♪」
男「海岸ねぇ〜。あれもまた災難だな」
何かがあるらしい、海岸だと。
金髪女「ふふっ…ですね。…………さて」
金髪女はクルッと向きを変える。
金髪女「作戦実行の時も来たり。…王都へ参りましょうか」
左、男を見て、
金髪女「デューレ君♪」
右、白髪の女を見て、
金髪女「キサラさん♪」
何かの行動の始まり。
3人はさっと姿を消した。
黒髪女「………」
一人残るは黒髪の女。
彼女達が何を企んでいるのか、何をしようとしているのか、結果がどうなるかは定かではない。
さて、舞台はその海岸の街へと移る。
彼女達の仲間が待ち受ける海岸都市へ…。



一夜が過ぎた。
海岸都市。
アレスティア領域を超えた場所にあるその街はそれほど規模の大きな街ではない。
それでも海岸、貿易の要だけあって栄え大きな方である。
艦はこの街で足を止めていた。
???「………」
街の中心区、考え事をする少女の姿が。
赤い衣装に緑色の髪の毛。
年は10歳ぐらいだろうか。
少女のその顔はどこか悲しげだ。
少女(今回も手がかり無し…)
何かを必死で探している模様。
しかし、落胆の顔色からも探し物が見つかっていないことは伺える。
少女「…ケーキでも買って帰ろぉ」
ケーキ屋へと向かう少女であった。


ケーキ屋。
大きな店ではないが、綺麗な外装に内装。
雰囲気はバッチリだ。
店員「おっ、ネオンちゃん。久しぶりだね〜、元気かい?」
威勢の良い男店員。
少女の名はネオンというようだ。
ネオン「うん、まぁ…」
口とは裏腹にそんなに元気は無い。
店員「で、今日は何にする?」
ネオンという少女、常連のようだ。
迷う様子も無く、即座に目的のものを指差す。
ネオン「このケーキ、5つ…じゃない、7つ。と…あんみつを」
店員「はい、どうも」
8人分購入する。
品を受け取り、店を後にしようと振り返る。と、
『カラーーン』
ドアが開いた時に鳴る魔法音。
アヤメ「ここがケーキ屋さんね」
ホフル「…」
エルティ「へぇ〜、雰囲気あっていいですねぇ〜」
ケーキ屋へ現れた艦の者達、計5人。
自由行動中らしい。
エルティ「皆さんの分は買って帰るんですか?」
リーン「そんな金ありません。あの艦、何人乗ってると思ってるのよ」
アヤメ「もったいないわよ。その分、私が食べてあげるから」
エルティ「あ、そういうことなら私もご一緒しますよ〜」
アヤメとエルティーネ、甘いものに目が無い。
アルクス「まったく…女どもは」
あきれ果てるアルクス。
アルクスとホフルは付き添いのようだ。
ネオン「………」
そのやり取りを無言で、鋭い目で見つめ続けている。
ネオン(魔力が無い?……変な人達)
ネオンは一人店を出た。
暑い日差しが目に差し込む。
目の前に広がるのは崖、そして広大な海。
海沿いにこのケーキ屋はあった。
ふと、ネオンは店の前で、足を止める。
動くことも無く、何かを感じ取る。
目を瞑り、広範囲に気配を集中させる。
ネオン(何だこいつ等…生命反応はあれど魔力を持たない者がこうも…)
彼女も何かの能力者なのか、不思議な力を使えるようだ。
街の至る所にいるクルー達の気配を全て感じ取っている。
魔法世界のこの世界では魔力を持って生まれることが普通。
魔力が無い者がいないわけではないが、ここまで集中することは無い。
それ故に、ネオンは不審に感じていた。
危険人物として…ではなく、何かおかしなことがあるのではないかと。
ネオン(エリアからは出来る限り事を起こすなとは言われてるけど…これはどうするべきか…?)
ネオン(様子を見た方がよさそうね)
そう結論に達した時。
店の前にいたはずの少女の姿はそこには無かった。


建物の屋根の上。
ネオン(何かの団体か…。でも、魔力らしい魔力を持ってるのはあの2人だけ…)
屋根の上より見下ろす先。
ネオンの視線の先には街道を歩くひみろ達。
ネオンの指す魔力を持つ者…というのはラビ、バニの2人のようだ。
ネオン(あのピンクの髪の奴のは魔力とは少し違う…。近いようだけど)
ピンクの髪…りゅいのことだ。
ネオン(この女は生命反応すらない…。人間…いや、生物じゃないのか?)
セフィーのことだ。
アンドロイドなので生命反応がないのも当然である。
冷静に相手を分析、調査している。
ひみろ達の近くに接近しているというのにまるで気づかれていない。
かといって、もっと近づくわけでもなく、何かを仕掛ける様子も無い。
バニ「…!!」
バニはふと、気配を感じる。
ネオンから注がれる視線に。
そして振り向くと、
『シーーーン』
バニの見る先には何もいない。
そこにはネオンの姿は無かった。
ひみろ「どうした?」
バニ「いや、なんでもないよ」
バニ(気のせい…かな)


ネオン(こいつだけは生命反応が異常に強い。こんな反応初めてだ……)
先ほど同様屋根の上。
次なる標的、ネオンの視線の先はネネコ。
今ネネコはキャスやイールク達と共に行動している。
ネネコ「ねぇねぇ、次は?次は?」
キャス「ん〜とねぇ〜、これなんてどう?」
まるで修学旅行のような光景だ。
イールク「少しは休みましょうよぉ〜」
キャスとネネコ、二人のハイテンション具合でイールクもマックスもグッタリ状態。
キャス「ええ、もう?」
道端で足を止め、抱えた荷物を降ろす。
完全な休憩おねだりモード。
ネオン(変な生物とでも契約したのか?人間の域を完全に超えている…が、なぜ魔力が無い?)
ネオン(大して危険でもないが、こいつ等…おかしすぎるぞ)
ネネコ「…!!」
バニ同様、ネネコも気配を感じ取る。
そして、さっと振り返り、見上げたその先は…。
誰もいない。
既にネオンは姿を消していた。
イールク「どうしたの?」
ネネコ「あ、いや…なんか誰かに見られてる気がして…」
キャス「ん〜、気のせいじゃない?」
ネネコ「だよね〜」
気のせい、ネネコ自身もそう思い込む。
マックス「………」
しかし、マックスだけは何かが本当にいたのではないか?
そういう思いをぬぐいきれなかった。


夕刻。
森の中。
戦艦V−TUG出発の時間。
クルー達はV−TUGへと乗り込んでいく。
ネオンに監視されていると知らずに。
ネオン(なるほど、あんな兵器が…)
高い木の枝の上に立ち、V−TUGをマジマジと見つめる。
昨日の連中とは違い、かなり近くから。
そのために、どれほど異質な物なのかしっかりとわかる。
それでも、クルーに発見されないほどの距離は保っているが…。
ネオン(ここならセイオーンで攻撃を仕掛けることもできる…)
ここというのは海岸都市を指している。
セイオーン…エスタの持つ海蛇ゴーレムを彼女も持っているということだろうか?
ネオン(エリアには事は起こすなと…どうする?これはかなりの大事になりかねない…)
襲うか襲うまいか…負けるという発想など無い。
問題は撃破した際に大事となって作戦に影響を及ぼさないか?そこに絞られていた。
顔を後ろへ、海岸都市を見る。
ネオン(この街も滅びるな…だが、つぶしておくか)
ネオンの答えは出た。
すると即座に、
ネオン「来い、ウインザード・セイオォォォォン!!!」
声は高らかに。
バニ「…ん?」
ネオンの声は戦艦に乗り込もうとしていたバニの耳にかすかに届いた。
ネネコ「どうしたの?」
バニ「何か聞こえたような…」
ネネコ「?」
聞こえたのはバニ一人だけ。
『ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…』
「うわぁぁぁぁ、な、何だぁ!!?」
強烈な地響きが巻き起こる。
街を揺らし、森を揺らし、戦艦V−TUGをも激しく揺らす。
地震の発信源は街の向こうの海。
そこには巨大な魔法陣が浮かび、光を放っている。
ネネコ「なに……?」
マックス「くっ…もしかして…セラ?」
地震のせいで立っていることすら難しい。
そんな状況下では彼等には何も把握できない。
そして、間もなく召喚される。
彼女の言うウインザード・セイオーンとやらが…。
???『ネオン…』
ネオン「…!」
ネオンに届くテレパシー。
その瞬間、振動は急停止する。
地震は収まり、海に浮かび上がっていた魔法陣も消滅した。
セイオーンは召喚されていない。
ラビ「止まった…」
ひみろ「なんだ…?」
事態が飲み込めない。
ネオン『かぐや…何か?』
テレパシーの主、ネオンにはわかるようだ。
どうやら、ネオンの仲間なのだろう。
『ザッ…』
影が木々を潜り抜け、ネオンの元に。
昨日の黒髪の女だ。
かぐや「ゴーレムを出そうとしていたのか」
ネオン「うん、あれをつぶしておこうと…」
ネオンはあれというものを目線で指す。
かぐやという名の女もそちらへ身体を向ける。
かぐや「ほぅ…」
昨日見たときは暗くて遠くてよく分からなかったその形状。
今は近くでしっかりと見える。
かぐや「思った以上に凄いものだな」
ネオン「…? 知ってるの?」
かぐや「昨日見た」
ネオン「…そうなんだ」
かぐや「エリアは別に無視してもいいと言っていたが…」
ネオン「え、そうなの?…じゃあ、放っておくよ」
かぐや「そうだな…。あんみつが食べられなくなるし…迷惑だ」
かぐやにとっても戦艦のことなどどうでもいいらしい。
街が破壊され、あんみつが食べられなくなるということのほうが問題のようだ。
ネオン「あははっ。…ちゃんと買ってあるよ、あんみつ♪」
手に抱えた袋を持ち上げ、かぐやに見せ付けた。
それを見たかぐやはネオンにウインクを送る。
かぐや「なら帰ろう。作戦も開始するようだしな」
ネオン「うん」
そして二人は姿を消した。


キャス「何?何だったのぉ?」
ひみろ「今は急いで艦に乗り込め!!」
慌てふためく一同の中、ぼ〜っと林を眺めるバニ。
ひみろ「バニ、お前も早く!!」
バニ「さっきの声は…」
マックス「…声?」
ひみろ「………」
確信は無い。
だが、薄々感じ取る者はいた。
魔法使いの所業だということに。
ただ、セラの…という所にまでは至っていないが。



夜。
アレスティア王国、王都。
お城の見える位置、建物の屋根の上に人影が3つ。
金髪女「王都の舞踏会は明日…ですね」
デューレ「面倒くせ〜なぁ、今襲ってもいいんじゃない?」
金髪女「デューレ君。襲うのではなく、勧誘しに行くのですよ」
ターゲットはリン姫のようだ。
デューレ「はいはい。こっちについてくれるとも思えないんだがなぁ〜」
デューレは白髪の女性、キサラの方へと目をやる。
キサラ「………」
金髪女「そのための対策です。それにこれを望んだのはシルフィなのですから…」
デューレ「シルフィねぇ…あっちはもうすぐだろ?」
金髪女「はい。1万年ぶりのご対面…是非この目にしたかったんですけどね」
デューレ「本気か? 俺は勘弁だぞ、あんな化け物みたいなのが二人も。戦いにでもなって巻き込まれたら終わりじゃねぇか」
金髪女「リーダーをそこまで…。デューレ君、私の前でももっとかっこよく振舞ってくれてもいいじゃないですか」
呆れ顔をする金髪女。
デューレ「エリアは俺の全てを知ってるからな、意味が無い。そっちのには…無理」
この二人、相当深い仲なのだろう。
そっち…というのはキサラを指す。
エリア「あらあら、キサラさんに失礼ですよ」
そのキサラは二人の話には耳も傾けず、ずっとお城を眺めている。
キサラ(リン姫…)
リン姫への意識は強い。
敵としての意識が。
しかし、口には出さない。
エリア「でも、1万年の愛って…なんだか素敵ですよねぇ〜」
デューレ「そうかぁ〜?」
デューレのこの発言は小言。
しかし、妄想モードに入ったエリアにはどの道聞こえない。
エリア「暗闇の中へ閉じ込められて1万年、辛い辛い日々が続いたことでしょう。それでも耐え抜けたのはきっと愛の力…」
デューレ「違うだろう…」
エリア「どんなに辛いことが待ち受けていようとも、愛さえあれば乗り越えられる」
デューレ「おぉぉぉぉい」
エリア「やっぱり愛とは偉大なのです。ねっ、デューレ君♪」
極上の笑顔をデューレにプレゼント。
デューレ「ま、まぁな…」
否定などできるはずも無い。
エリア「まぁ、巻き込まれたら…終わりなんでしょうけどね」
意味無く追加された最後の一言。
それはまるで何かを予言しているかのような発言。
それが何を意味するのかは謎である…。


続く
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さて、どうでしたか?
まだ後編が残ってますが、さてさて次は誰が出てくるのでしょう?
ゴーレム姫、ワルツ編スペシャルな今回、あの二人も出てくるかも…w
物語も綺麗に完結します。
どう収まるか、予想とかして楽しみにお待ちください。