kanariya022006-04-18

今回はお待たせ、みんなのフロア大戦の新作です。
どんな話なのかは中を読んでからのお楽しみ。
ドキドキワクワクの世界が待っています。


ちなみに、みんなのフロア大戦は本編とは関係ありません。
本編もこんなだろうとか深い推察はしないようお願いします。
ではでは、ご覧ください
―――――――――――――――――――――――――――――――――


只今激戦中。
要塞内。
キリト「ジェイクゥ〜!!!」
グースィ「くぅ………」
敵はグースィのゲルタリーエクト1機。
クラノス「よしっ、あと一息だ!!」
このステージもクリア寸前、ゲルタリーエクトももう撃破寸前後一歩というところ。
キリト「ウォォォォォォォ!!」
キリトは赤くなった髪を振るわせ、レオレイガーを突っ込ませる。
キリト「ライアット…インパルスゥゥゥ!!」
金色の鋭い刃がゲルタリーエクトを貫き、閃光を放つ。
激しい爆発。
『ビキッ……ビキィ…』
直撃を受けたゲルタリーエクトからはエネルギーが流出する。
火花が散る。
撃破完了の合図である。
グースィ「我をここまでに追いやるとは見事なり」
キリト「ジェイク!!」
グースィ「だが、我の意地…ただではやられはせん」
リン姫「………」
怪訝な顔を浮かべるリン姫。
グースィが何かをやろうとしていることをいち早く感じ取る。
グースィ「見よ、この光を。汝等を永遠の迷宮へと引きずり込もう!」
ゲルタリーエクトに光が集まる。
エネルギーを溜めているのだろう。
キリト「何ッ!!」
アルクス「しまったっ、全機撤退だ!!」
リーン「間に合いませんッ!!!」
烈火「くっ………」
とっさのこと。
艦の方へと集まるも、乗り込むことすら間に合わない。
ゲルタリーエクトから放たれる謎の光。
黒い色の光、黒い閃光。
閃光で全ては黒く染まる。
リン姫「やらせぬ」
ひみろ「!? リン姫!!」
艦の前。リン姫とイリアレウス・エンプレスは立つ。
そして、
『ビュゥゥウゥン!!』
巨大なバリアが張られた。
とても大きく、艦を完全に包み込む。
直後、バリアと光が衝突する。
強烈な振動と突風が襲い掛かる。
リン姫「ぐぅ……」
一瞬でも気を緩めると何かがバリアを貫き、襲い掛かってくる。
リン姫は必死でバリアを張った。
ネネコ「リンちゃん!!」
ひみろ「リン姫ぇ!!」
艦橋より顔を覗かせるエルマーとブラック。
バリアを張り、防いでいる間に戦艦への乗り込みは完了していた。
残るはリン姫のみ。
リン姫「心配するな…妾を誰だと思っておる……」
必死でこらえるその顔は辛く、大変なのが窺い知れる。
それでも、普段の強気を抑えることは無い。
グースィ「これま…で……だ………」
光の中、姿は見えないが、グースィの声だけが届く。
リン姫「…!!」
光はさらに凄みを増し、襲い掛かる。
それは、リン姫の結界では防ぎきれないほどに…。
『バキバキィィ!!』
音が鳴る。破られた音が。
結界が砕かれ、そして、リン姫は闇に包まれた。
ネネコ「リンちゃん!!」
ひみろ「くっ!!」
間もなく、艦も闇の中へと包まれる。
黒く染まった、色無き闇へと…。



「チュンチュン…」
鳥の鳴き声。
ネネコ「ん……んぅ?」
眠りからの目覚め。
目を覚ますネネコ。
エルマーのドアが開き、ネネコは艦橋の床に眠りこけていた。
視界に広がるのはのどかな自然。
林と草原が広がる平和で美しい景色。
青い空に光り輝く太陽。
ネネコ「ここは…」
ひみろ「う……ん…」
ネネコの隣、ひみろも目を覚まし始める。
ネネコ同様マシンから乗り降り、床に寝そべっていた。
ネネコ「ひみろ…」
ひみろ「ん…ん……ネネコか…」
周囲を見回す。
ひみろ「ここは?」
ネネコ「さぁ?」
何も分からない。とりあえず景色を見渡す。
ひみろ「!リン姫は?」
ネネコ「あっ!!………どこ!?」
先の状況をようやく思い返し、リン姫がいないことにも気づく。
二人は先ほど同様、周囲を、四方八方を見回しまくる。
慌てた形相で。
そうしておよそ1分。
『シュタッ』
二人の目の前に影が飛び降りてくる。
ひみろ「…?」
構えこそ取らないが、一瞬ながら警戒を抱く。
???「あなた方は何者ですか?」
それは見知らぬ女性。
清楚で整ったブロンズヘアー。
不思議な衣装でマントをつけたその服装は貴族か…はたまたナイトか。
とかく、変な印象を抱くことに間違いは無い。
丁寧で、毅然とした態度でひみろ達に話しかける。
ひみろ「………?」
ネネコ「………?」
女性「再度、確認します。あなた方は何者でしょうか?」
ひみろ「あ…えっと、俺達は……」
軍人でもなく部隊配属の無いひみろ達にこの問いは難しい。
女性「………。移民…という柄でもなさそうですね。これは一体なんですか?」
艦の横壁をコツンコツンと叩きながら。
とにかく、両者の話は合わない。
両方に認識のずれがあるようだ。
女性「はぁ……、何も答えてくれないのですね」
答えられないといったほうが正しい。
ネネコ「あの…この辺に女の子いませんでしたか?」
女性「…?」
ネネコ「金髪の女の子なんですが…」
女性「金髪…?」
ネネコ「はいっ」
女性「………もしかして…あの方?」
女性は顔を、視線を上へと上げる。
ネネコとひみろも釣られて見上げる。
船の甲板の上に一つの影。
太陽でまぶしく、誰だかは分からない。
女の子「………」
こちらの視線に気づいたのか向こうもこちらへと目をやる。
ひみろ(あれは……)
ひみろはその姿に何かを感じ取ったようだ。
烈火「うぐっ……なんだ?」
艦の中へと潜っていた者達も目覚め始める。
そして、先に起きていたひみろ達の姿と外の景色に目がいったためか続々と艦橋へ歩み始める。
女性「まだこんなにも……」
女性は驚く。
中から出てきた数多くの人に。
女性「姫様ぁ、こちらに人が!!」
ネネコ「え…!?」
ひみろ「姫…?」
ジャッキー「……なんだぁ?」
甲板の上の女は、
『ブゥゥン』
ふと姿を消した。
隠れたとかではなく、一瞬で消えた。
そして、
『ザッザッザッザ…』
前から足音が聞こえる。
手前の女性の背後、死角となる位置でどんどんと近づいてくる。
女性は振り返り、横へと移動。
すると、完全な姿をうかがうことが出来た。
その姿に絶句する一同。
ひみろ「リン……」
ネネコ「ヒメ………」
そう、リン姫だった。


リン姫?「妾を知っているのか?」
スラッとした身体、長く伸びた髪は編みこまれ、おさげと化している。
子供っぽさは薄れ、逆に大人の色気も感じさせるほどで、落ち着いた雰囲気。
ネネコ達の知るリン姫とは違うところはたくさんある。
しかし、誰が見たってリン姫である、それは間違いない。
ひみろ「どうしたんだ、その格好は?」
リン姫の衣装は中国衣装では無い。
白いローブのような衣装に身を包んでいる。
リン姫「はぁ、何を言ってるの?」
ネネコ「ん?」
リン姫の口調に疑問を感じずにはいられない。
リン姫「で、あなた達はどこの者?何をしようとしてるの?」
ジャッキー「へ?」
ネネコ「ちょっ、何言ってるのリンちゃん!?」
リン姫「初対面なのに馴れ馴れしすぎ。わけわかんないわよ、あなた達は…」
ひみろ(何だ?本当にリン姫か?)
口調、素行、あまりにも知っている者と違いすぎる。
ひみろ「なぁ、リン姫。……本当にオレ達を知らないのか?」
リン姫「知らないに決まってるでしょ」
間髪入れず。
ひみろ「…………」
ジャッキー「おいおい、なんなんだよ、俺達を忘れたっていうのか!!」
群れの列を抜け、リン姫に迫り来るジャッキー。
リン姫に掴みかかろうとしたジャッキーだったが…、
『バシィィィン』
ジャッキー「はうわっ」
見えない壁、結界がリン姫の前に発動し、ジャッキーはそれに衝突する。
リン姫「寄るな、汚らわしい」
ぶつかるジャッキーに動じず動さずの姫。
ネネコ「結界…」
ひみろ(これは間違いなくリン姫の…)
リン姫の得意魔法、結界術。
リン姫「話が見えないから、整理の意味で説明してあげる」
リン姫「妾はリーン=リィズ=ラードナー。アレスティア王国のお姫様にして最大権限所有者」
リン姫「ここまで言えば妾を間違えることも無いでしょ?」
ネネコ「だからぁ…リンちゃんでしょ?」
リン姫「馴れ馴れしいぃ!」
『ゴツン』
ネネコの頭を軽く殴る。
ネネコ「いたぁ……」
女性「何か不思議な事情がおありなようですね、この人達」
リン姫「ああ…ったく、忙しいのになんでこんなの相手にしなくちゃいけないのよ…」
ひみろ(彼女がリン姫なのは間違いない。が、俺達の知るリン姫とは違う…なんだこれは?)
リン姫「面倒だけど、何人か来なさい。尋問するから」
リン姫「ターニャ、後はお願い」
ターニャ「承知しました」
リン姫にお辞儀をする手前の女性。
ターニャをその場に残し、リン姫は姿を消す。
ひみろ「ここはもしかして…」
そんなやり取りを眺め、一つの結論へとたどり着く。
ネネコ「もしかして…?」
ひみろ「いや、間違いない」
烈火「…?」
ひみろ「…ここは…異世界だ」
ネネコ「イセ…」
ラビ「カイ…」
一同「……………異世界ぃぃぃぃぃ!!?」
一斉の驚き。
ターニャ「…?」
その様に一人ハテナを浮かべるターニャ。
舞台はリン姫達の世界。
それも皆の知るリン姫ではなく、知らないリン姫の世界である。



ターニャ…リン姫の側近をやっているらしい人の話。
ひみろの推測通り、ここは異世界
魔法使い達の住まいし世界。
そして、セラ達の住まいし世界。
ファンタジーな世界だ。
そして、先ほど話していたリン姫は間違いなくリン姫である。
ただし、年は16才。
ひみろ達と共に戦ったリン姫より2つも年が上。
この世界のリン姫はひみろ達と共に戦ってはいないらしい。
ようはリン姫はひみろ達のことを知らないということだ。
しかし、ステアのアズトシェイルのせいで、王都が崩壊したという事実はある。
今王都はその崩壊から必死に立ち上がり、復活するべく至る所で工事が行われている。
右も左も工事中の建物ばかり。
まだまだ完全復活には遠い。
しかし、今の王都は活気付いていた。
人々の熱意は凄まじく、元気な発言が飛び交い、家を組み立てていく。
城下町、横を歩くクラノス達もその光景にはどこか元気付けられていた。


王都セレーリオ、場内。
審議の間。
リン姫「なるほど……」
ターニャより、クラノス達の事情を聞く。
先ほどのやり取りでは何がなんだか分からなかったが道中整理まとめられた意見でようやく事の次第を理解できたようだ。
ターニャ「どうなさいます?」
リン姫「異世界からの来訪者…といわれても、戻る術もないわけだし」
リン姫「あなた達は何か案はあるわけ?」
戻る術は今の所無い。
ゲルタリーエクトの力で強制的に連れて来られたため、クラノス達ではどうしようもない事だった。
クラノス「いえ…何も……」
もう一人のリン姫の時ですらお姫様という身分上、気を使わなければならない存在。
この世界でしかもお城の中でとなるとクラノス達は完全なアウェーであり、なんの権限も無い。
この状況ではリン姫に逆らうなど恐れ多いことだろう。
そもそも城の雰囲気に飲まれ、そんなこと考えつきもしないが。
リン姫「戻る方法…か。あるとすれば…やっぱり…」
ホフル「……?」
ターニャ「あるのですか、そんなものが?」
リン姫「さぁ…。まぁ可能性の話ね」
自分でも納得がいってない様子のリン姫。
本当に可能性程度の話なのだろう。
クラノス「何かあるのでしたら…教えていただけますか?」
リン姫「……あなた達、水の都は知ってる?」
岩城「水の都!?」
リン姫「…知ってるようね。もう一人の私も立ち寄ったのか」
リン姫「まぁ、それならいいわ。あそこに住んでいるセラ、エスターシャ=ローネなら…」
リン姫「あなたたちを元の世界へ戻してくれるかもね」
クラノス「エスターシャ=ローネ…」
リン姫(彼女のことも知ってるのか…)
リン姫「場所は…ターニャ、後で説明してあげて」
ターニャ「あ、はい…」
リン姫「いい?わかってると思うけど、知らないかもしれないから説明しておいてあげるわ」
リン姫「水の都に住むエスターシャ=ローネ。あれは妾が知る中でも最高の魔法使いよ」
岩城(知っている…)
リン姫「あれ以上は思い浮かばないぐらい。同時に…強いから、気をつけなさい」
ホフル(確か、水の都を守護する者。水の都に近づく者は容赦しないという…)
クラノス(…ということは、また戦うことになるのか…あの化け物ゴーレムと……)
リン姫「…まっ、がんばっていってきなさい」
そう言い残して、ふっと後ろを向き、立ち去ろうとする。
ホフル「来てはくれないか?」
リン姫「?…なんで?」
イリアレウス・エンプレスなら化け物ゴーレム、セイオーンともわたり合える。
この異世界という場所で、存在的にも実力的にも申し分ないリン姫は是が非でも加わって欲しいところ。
しかし、
リン姫「妾は忙しいの。本来あなた達に構ってる暇だって無いんだから」
リン姫「こうやって待遇良く接してあげてるだけでも感謝してもらわないといけないんだからね」
そう言って、ついには立ち去っていった。
ターニャ「おっしゃられた通り、あの方は御多忙の身。あなた方の世界で何があったかは知りませんが、ここから先はご自身の力でどうにかして下さい」
クラノス「はぁ……」
ターニャより水の都への進路、そしてさらにこの世界の話を聞く。
そして、戦艦V−TUGで出発を開始した。
目的地は水の都。
元の世界へ戻れる可能性を持つ者、エスターシャ=ローネの元へ。


ターニャ「姫様、あの方々は水の都へ向かわれました」
リン姫「…そうか」
書類整理中のリン姫。
ペンを握り、書類に書きこみながらもターニャの話を聞く。
ターニャ「ですが、よろしかったのですか?」
リン姫「何がだ?」
ターニャ「セラの元へ行くことはあまりに危険なことです。あのような魔力すら持たない者達で行かせては…」
リン姫「相手が相手だ。魔力があろうがなかろうが関係ない。それに…」
ターニャ「それに?」
リン姫「妾と共に戦っていた…というなら相応の力があるはずだ」
ターニャ「相応の…?姫様とですか!?」
リン姫「ふふふっ、かもな」
ターニャ「そんな…ありえません」
セラはこの世界では最強無敵の象徴。
リン姫がその座についていることはこの王国に知らないものはいないぐらい有名な話である。
リン姫と肩を並べるほどということはこの世界においてあまりにも凄いことなのだ。
リン姫「こちらとて手を貸している余裕は無いし、今はこれでいい」
ターニャ「はい…。しかし…」
リン姫「………?」
ターニャ「姫様、最近聞く噂なのですが…」
リン姫「なんだ?」
書類から手を置く。
ターニャ「凄腕の魔法使いが各地に出没していると…」
リン姫「凄腕?」
ターニャ「はい、……かなりの。集団らしいのですが、詳しいことは掴めていません」
リン姫「だが、それぐらいなら…」
ターニャ「…兵器を持っているという話も中にはあります」
リン姫「なっ、それってもしかして…」
ターニャ「いえ、真実は分かりません。しかし、彼等がその者達と遭遇してしまったならば…」
リン姫「……ゴーレムを持つ者、それも集団で…」
リン姫(ゴーレム使い…セラは妾とエスターシャ=ローネのみのはず…)
リン姫(新たなゴーレムが…新たなセラが現れたというのか)
それは衝撃の事実。
まだ可能性の話。
しかし、真実ならとんでもない話である。
ターニャ「……姫様」
リン姫「今はこの場を動くわけにはいかない」
ターニャ「……………」
リン姫(セラ集団…か。異世界の者達よ、無事を祈る)
不穏な影がよぎる。
それは新たなる敵との遭遇を予期するものかは分からない。
しかし、この時確かにリン姫は嫌なものを感じ取っていた…。


続く
―――――――――――――――――――――――――――――――――


はい、どうでしたか?
ドキドキワクワクの異世界は?
まだまだ続く異世界話。
伏せもちゃんとありますね、はてさてどうなることやら…。
次回もお楽しみください。