kanariya022006-04-15

エスタ「リミッター解除!!」
セレナレナが変形する。
羽織っていたマント状の鎧が開き、翼となる。
シルフィ「……!」
その変貌にヴァンヒューラは動きを止める。
青く美しき光を放つその機体は空高く浮かび、シルフィとヴァンヒューラを見下ろしていた。



はい、今回は炎と水のワルツ編ラストバトルの続き。
そしてお待たせ、第3部の情報もちょこっと公開です。
―――――――――――――――――――――――――――――――――


空高く対峙する2体のゴーレム。
シルフィ「不思議な感じだ…。先ほどよりも力が増し、…穏やかになった」
シルフィ「穏やかで温かく俺を包む」
エスタ「これはセレナレナの真なる力…そして、私の想い」
シルフィ「そう…か。……来い」
エスタ「……シルフィ」
二人の想いは繋がっている。
兵器だからとか関係ない。
敵対していても相手を嫌ったりはしない。
むしろ、相手を大切にしているが故に互いに辛い思いを強いられる。
それでも、戦いをやめるわけにはいかない。
二人に戦いをやめる意志はない。
エスタ「シルフィ…お願い……。これで、安らかに…」
潤む瞳。
本当は目を閉じて、攻撃したい。
涙を流さずに済むように、目を閉じて。
しかし、魔極の瞳、魔力の流れを見通すその力は今は必要不可欠。
決して目を閉じるわけにはいかなかった。
結果、瞳からは涙が流れようとする。
セレナレナの手を前に突き出す。
そして、
エスタ「一撃で…決める」
声と共に、巨大な魔法陣が描かれる。
と、陣の中心から光が現れた。
『ビキッ…ビキッ……』
シルフィ「…!?」
それは空間が歪む音。
信じられない程の魔力を練りこんでいた。
力が徐々に溜まりゆく。
空間の歪みも肥大化し、周りの景色全てが捻じ曲がっている。
この攻撃は防げるとかどうとかの問題ではない。
エスタも確信している。
これを使えばシルフィを倒せると。
殺せる…と。
その力が解き放たれる。
エスタ「アクア…バーストエンド!!」
方陣から吹き荒れる光。
それは視界の全てを満たし、白き世界を生み出す。
『ビィュンビュン…』
強い光が去り、現れたのはヴァンヒューラを泡が包み込む姿。
泡は凝縮する。そして破裂。
ヴァンヒューラのいた場所から空間が歪み始め、飲み込まれていく。
まるでブラックホールでも起きたかのような有り様で、その一帯は黒く染まっていった。
エスタ「………」
これで生きていられるはずはない。
空間に飲み込まれた以上、どんなに強くても関係ない。
消滅した。
そういうことになる。
エスタもそれを信じてやまない。
だが、最後まで見届けないことにはなんともいえない。
最後まで見届けるまで、自分が何を思えば良いのかどんな顔をすれば良いのかわからない。
不安が過ぎる中、ただただ黒く染まるその空間を眺めていた。
およそ30秒。
突然の出来事。
『ゾクッ…』
エスタ「っ…!!」
声にもならない寒気。
全てを見透かされたような感触を味わう。
これを引き起こしているのは黒く染まったあの場所。
エスタ「これ…は……」
エスタにはわかる。
誰のものなのか。
どうやったのかが…。
空間の歪みが…黒く染まったその空間は霧のように消えていった。
中から姿を現したのは…、
エスタ「シルフィ…」
シルフィン=アビスとヴァンヒューラ。
何事も無かったかのように無傷でアクアバーストエンドを喰らう前との違いが一つしか見られない。
その一つ、そう、目を開いていること以外は。
エスタ(魔極の瞳…)
開かれたその目はエスタと同様のもの。
人の心をも見通しそうな不思議な瞳を宿す。


魔極の瞳。
魔の流れ、魔法の流れを見通す目。
高度な魔法の流れをも捉えることが出来る。
魔の流れが見えるということはその流れに干渉することも出来るということ。
つまり、魔法を打ち消すこと、無効化させることもできるということ。


エスタ「勝てない…勝てる術が…残されてない」
最強の攻撃を打ち砕かれた。
そして遂にシルフィの目が開いた。
もはや、絶対的な敗北を感じずにはいられない。
攻撃はもはや通用することはない。
絶望に追い込まれるエスタ。
しかし、そんなエスタを前にシルフィはとどまることはない。
シルフィ「壊すか…全てを。……邪魔だ、お前も」
エスタ「!?」
先ほどまでのシルフィとは違う。
危険でありつつも理性は抑えられていたのに、今はそんなものが感じられない。
『ギッ!』
セレナレナを睨み付ける。
と、
エスタ「!!」
セレナレナの左腕が吹き飛んでいた。
エスタ(暴走が……邪神が完全に目覚めた)


???「エスターシャ=ローネと精霊機セレナレナ、この組み合わせでも歯が立たないとはな…」
広き荒野。
空を漂う空中要塞を下から眺める2つの影。
1人は黒い衣装を身にまとった少女。
年は10歳ちょいぐらいだろうか、幼さすら感じられるほどで背も低い。
今口にした方だ。
???「私には理解しがたいモノです。なにがどうなっているのか…」
少女の横、こちらもまだ若く少女とも呼べる。
肌の色は少し黒く、頭から横に角が生えている。
人間ではないようだ。
???「そうか、確かにこの戦いは極限なる域。魔極の瞳でもなければ見えもしない」
そう口にする少女。
彼女の目も不思議な瞳を宿している。
そう、魔極の瞳。
魔の流れを見通す眼を。
???「一体どうなっているのですか?」
???「圧倒的にシルフィン=アビスが優勢だ。もはや現状ではエスターシャ=ローネに勝機はない」
???「そう…なのですか。でも、そうなると……」
???「ああ、もしエスターシャ=ローネが倒されれば終わりだな。世界が…」
???「抑えていた理性も力も全て解き放たれた。アレに勝てる者はいまい。世界の全てを滅ぼすまで止まることはないだろう」
???「………」
???「だが…心配する必要もない」
???「はい?」
???「…ルナージャ、柚子葉を呼べ」
人ならざる少女はルナージャというらしい。
ナージャ「はっ…あの巫(かんなぎ)の令嬢をですか?」
???「ああ、新しい舞台の準備だ」
???「それと、我は今しばらくこの地にとどまる」
ナージャ「承知いたしました。…ゼファーラ様、お気をつけて」
少女の方はゼファーラと。
ゼファーラ「ああ」
ナージャは去っていく。
一人、ゼファーラは空を眺める。
はるか遠く、人の目では決して見えない遠い場所にいるリン姫。
彼女の方へと目をやる。
ゼファーラにはどうやら見えているようだ、リン姫の姿が。
精霊機エストレイアの姿が。
ゼファーラ「リーン=リィズ=ラードナー…どうやらお前がこの戦いの鍵を握っているようだな」
絶望的なはずのこの状況で、少女は笑みを浮かべていた。


戦いを遠く見守っていたリン姫、そしてイリス。
エスタとシルフィの戦いを見、そして決心がつく。
戦場へ赴く決心が。
リン姫「…行く!!」
遂に出撃する。


―――――――――――――――――――――――――――――――――


今回はここまでです。
最終局面、色々出来事がありすぎて長いです。
次は遂にリン姫がラストバトルに参加。
目が離せません。


そして、今回も新キャラが出てきましたね。
ゼファーラとルナージャ
イリスやセイリィと違って、何か裏がありそうなのも気になるところ。
特にゼファーラはネオンやコリンの件で出てきてますしね。
この彼女の行動は第3部に大きく関係してきます。
大魔女たる力、そして何をしようとしているのか、それが明らかにされるのも第3部。
まぁ、今はこの究極バトルを行ってる第2部ラストに注目して欲しいので詳しいことはいえませんけどね。
次回も更なる激闘にご期待してください。