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さぁ、第1部セラ紹介も今回がラストです。
最後はコリン=アージュ。
年齢113歳。
魔女で毒作りが大好きだけど、友達好きな女の子のお話です。
では、行ってみましょう!!
年齢14歳。
魔女として生まれる。
母も魔女、父は普通の人間で兄が一人の4人家族でした。
14歳でありながらもその姿は幼女そのもの。
そのなり故に、周りからは年相応の扱いを受けず育っています。
しかし、生活は貧しくなく、とりわけ普通とも言えるものです。
いつまでも若い姿のままの母がいて、むしろ明るい家庭とも言えるでしょう。
この頃、コリンはまだゴーレムという言葉すら知りませんでした。
ゴーレム、この存在が一般に知られるようになったのはリン姫が侵略行為をしだしてから。
およそ100年近く先の話ですから。
「うわ!お前、また毒ばっか…どうにかならねぇか、これ…」
コリンの部屋。
勝手に入ってきた兄の第一声です。
「あっ、駄目だよ!!いきなり入っちゃあ…」
「まだウイルスとか一杯充満してるんだから。ボクの作った強力なの」
「いっ、なんだよ、そりゃ…うぐっ…」
兄、とっさに口を塞ぐ。
が、あまり効果はなさそうです。
「はいっ、お薬。それ飲んだら絶対大丈夫だから」
ポイッと兄目掛け薬瓶を投げる。
兄はそれをキャッチし、すぐさま飲んだ。
かなり苦い味。
その後、兄はあれやこれやと毒つくりをやめろと注意を始めます。
しかし、コリンは手を止めずに、毒研究を続けながら一言。
「大丈夫だよ、ちゃんと解毒薬も作ってるから」
作った毒は、必ず解毒薬を作るようにしている。
彼女が作っているのは毒だけではない、風邪を起こすものなど病気となるもの全て。
それら全ての治療薬をしっかりと用意しているのだ。
彼女いわく。
「毒さえ、病原菌さえあればどんな薬だって作れるよ」
とのこと。
毒の研究と同時にその研究も行っているようです。
毒や薬を作るのは魔女の習慣。
コリンだけのことではありません。
そう、コリン以外にもこうした毒、薬作りに励んだ魔女がいます。
「遠路遥々お越し頂きありがとうございます」
「お前の娘は立派に育っているようだな」
夜のこと。
コリンの家に誰かが訪問してきて母と二人、話をしています。
「はい、少々…毒とかに執着してまして…問題のある子なんですけど…」
「ふふっ、魔女の習性だ。気に病むことは無い。我もそうであったからな」
「そ、そうですか。……あの…ゼファーラ様、どうして私めの様な者の所へ…?」
訪問相手、ゼファーラという名。
「ふふっ、いきなり本題だな」
「あっ、いえ…」
どうやら頭が上がらない。
ゼファーラという者、相当偉い人なのでしょう。
「お前の娘へのプレゼントを持ってきた」
「私の…。あの…コリンにでしょうか?」
「ああ、そうだ」
コリンへのプレゼント。
突然の来訪とお土産に戸惑いを隠せない母。
魔女族。
かつて、魔女界に住んでいたその一族はどういうわけか魔女の住めない地となりました。
そのため、魔女達は人間界で生活することになります。
人間界で暮らす中で、魔女達の環境は勿論、子孫繁栄にも影響が出始めました。
そう、人と暮らす中で魔女は減少の一途を辿ったのです。
そして、コリン=アージュ。
魔女の減少化が進む中、彼女は今の世になお魔女と呼べる者として生まれてきた者。
「魔女も今は残り少ない。我の一族も当の昔に我が血は途絶え、今は人の一族となっている」
「故に、数少ない…おそらく最後の魔女であろうお前の娘への軽いプレゼントをしようと思ってな」
「は、はい。…真にありがとうございます」
ゼファーラは魔法を詠唱する。
と、空間が歪み、何か緑色の物が姿を現す。
緑色の物体はガシャーンと大きな音を鳴らし、部屋の外、庭へと落ちる。
「これは…?」
「ゴーレム。古代に生み出された戦闘兵器だ」
「戦闘…」
愕然とする母。
「戦いに使えというわけではない。ゴーレムは契約者の魔力を増大化させることが出来る…と、同時に特殊な力も備えて生み出すことが出来る。目的を持って使えば、便利な代物となろう」
「は、はぁ。ありがとうございます。…でも、こんなものよろしいのですか?」
「ふっ、もっと良いものを差し出したいものだがな。そう良い物をなかった。悪いな」
「い、いえ、滅相も!!」
「これは…そうだな、お前が生まれるよりずっと前にナギ国という国で手に入れたものだ…」
ゼファーラはゴーレムを手に入れた経緯を口にし始めた。
ナギ国は強力な兵器を手にしようとしていました。
力を求めること、それは国である以上、侵略行為、防衛行為、どちらにせよ極自然なことです。
ゼファーラはその国の兵器集めに手を貸しました。
ゼファーラ自身にとっても何か都合の良いことがあったのでしょう。
そして、様々な兵器が手に入ります。
その中にはゴーレムが3体も。
しかし、ナギ国にはそのゴーレムと契約を交わせる魔法使いがいなくて、ただの置物にしかなりません。
ゼファーラを迎えいれたナギ国はゼファーラに多大な仕事料を払うはめになるのですが、両者の言い分の元、ゴーレム1体で手を打ったのです。
そして、ゼファーラはゴーレムを手にし、国を去った…と。
ナギ国はその後、侵略され、支配されてしまいます。
侵略した国は“アレスティア王国”。
そう、リン姫の国です。
「あまり…無理はするな」
そう言い残して、ゼファーラはお土産、ゴーレムを置いて帰っていきました。
コリンと直接会いもせずに。
母はゴーレムを隠します。
コリンに見つからないように。
コリンに契約して欲しくないというわけではありません。
まだ契約するには時期が早い。
そう、思っているのです。
それから1年。
コリンが契約する時が来ます。
1年、ほのぼのと暮らす平和な一家の生活に変化はありません。
毒作りっぷりで兄が困らされるのも相変わらずです。
しかし、日常に降り注ぐ突然の出来事。
コリンの母が血を吐いたのです。
母に駆け寄り、心配するコリン。
「お母さん、薬!!薬は!?」
首を振る母。
なぜ首を振る?頭にハテナが浮かぶ。
薬は効かない。どんな薬だって…。
毒作りは魔女の慣わし。
かつて魔女は若返りの薬、どんな病気をも治す薬。
そういったものを生み出し、そして飲んでいた。
様々な薬を飲み、高い魔力へと開花させると共に長寿命、そして若い姿を保つ種族となったのです。
しかし、それはかつてのこと。魔女界での話です。
薬の作り方なども伝承されていたころの話。
今、こうして人間界で育つ魔女にはそうした伝承が受け継がれていません。
また、人間の血を持つために、魔女の持つ伝承通りの薬を作っても効果がないこともあります。
そのために、そのために一つの薬を作るためにそれ以上の毒をあおる必要があるのです。
魔女界との環境の違い、人の世界への移住のために起きる現象。
リスクがあるのはわかります。
それでも、魔女としての習慣は止められず、薬の研究を怠ることはありません。
誰かから教わったわけでもなく、物心がついた頃にはやり始めている行為なのですから。
そして、コリンの母も薬作りを行っていました。
そして、大量の毒をあおり、癒せぬ身体となったのです。
コリンともゼファーラとも体質の違う母の身体を癒せる薬を作ることはもう出来ません。
治そうとすれば逆に悪化の一途を辿ることになるのですから…。
後に、コリンはがそれを理解したのですが、どうにもなりはしません。
母は…亡くなりました。
母の死。
病気だというのに…原因が病気だというのに治せなかった。
そのことがコリンには悲しくてなりません。
自分にもっと腕があれば、知識があれば、母の病を治すことが出来た。
そう思わずに入られませんでした。
そして、母の死は…もう一つの意味合いもあります。
「コリン、お前は魔女だ。俺たちと流れてる時間が違う…」
兄の言葉。
コリンは魔女族、若返りの薬がないとはいえ、200〜300年は生きることが出来る。
何時までも若い姿のままで。
老い、そしてすぐに死んでいく人間とは完全に違う。
魔女の血は女にだけ継承される。
男は魔力が高いだけの人間に過ぎない。
よって、兄には全くといって良いほど魔女の特性は流れ込んでいないのです。
母にだけ、コリンと同じ時間が流れていました。
15歳、その年で彼女は一人違う時間を生きることになります。
母の遺品を、部屋を整理する…と、床に隠し部屋があることを発見しました。
部屋に入ってみると、そこには大きな緑色の物体が…。
「これは…」
すぐ横の棚の上に手紙が置かれているのを見つける。
手紙を手に取り、開けて見てみると…。
ゼファーラという者の手紙。
そこには目の前の緑色の物体、ゴーレムの説明がなされていた。
そして、最後に一言。
「100年後、会いたいと思う。それまで明るく元気で人のためになる魔女になってくれ」
明るく元気で…人のために…。
今のコリンには重たい言葉。
母を失い、悲しむ自分に。
母を救えなかった自分に…痛く突き刺さる。
「明るく元気に…人のために……目指したい…うん、目指したいよ」
コリンの目から涙が流れ落ちていた。
キッとゴーレムのほうへ目を向ける。
『我ト契約セヨ』
ゴーレムが脳に語りかけてくる。
毒さえ、病原菌さえあればどんな薬だって作れる…。
私には薬を作ることしかない。人のためになれること…これしかない。
コリンの決意は決まっていた。
そして、本でしか見たことが無い虫が頭に浮かぶ。
コリンの周りには虫や動物は近寄らず、結果本でしか存在を知らないもの。
毒を使う者として、見てみたかった存在。
『契約完了』
その言葉と共にゴーレムは姿を変え始めました。
ふわふわと浮かぶ緑色の…虫。
「…初めて見た。これが…蜂なんだ。……よろしく、フローネリア」
涙を流しながら、それでも必死で笑顔を作り、フローネリアを迎え入れようとするコリンでした。
100年後の約束。
コリンはそれを忘れることはありません。
年月が流れてた今でも、深い悲しみに暮れているからというわけではありません。
あの手紙の一文、明るくて元気で人のためになる魔女。
それを実行したくて彼女はがんばっています。
“幸せを運ぶ魔女”、そんな呼び名さえ付けられるほどに愛されています。
肉親はもういなくて、幼い容姿のせいで恋愛にも至れず…幸せと言いがたい状況の中で彼女は笑顔を振りまいています。
それは、手紙のおかげ、ゼファーラの残した手紙がそうさせたこと。
だから、ゼファーラという者に会いたい、礼を言いたい、そう純粋に思ったのです。
そして、113歳となったある日。
コリンは街で薬を売っています。
と、街へ一人の訪れた少女が訪れます。
強い魔力を持つ少女は、誰しもが知る存在。
今最も話題となっている人物です。
リーン=リィズ=ラードナー、リン姫です。
魔力を感じたコリンが振り返ると…。
コリンとリン姫、二人の視線が繋がるのです。
はい、コリン編でした。
短いと思ってたのに異様に長くなった。
予想外です^^;
コリン絡みもさることながら、アレスティアにゴーレムが2体ある理由もしっかりしてあります。
そして、なにより気になるゼファーラ。
オエビ見てる方はわかりますが、ネオンにも絡みますよね。
ゼファーラ、彼女も遠くない内に紹介するかもしれません。
さて、リン姫から5人生い立ち説明してきましたが、これでかなりの情報が分かったのではないでしょうか?
2部に出てくる連中、そしてゼファーラのことなんかはまだその時になりますが、この5人の話は彼女たちとも繋がっていくんですよね。
2部でも、かぐやが幼少のリン姫に敗北した話、ネオンの呪い、そしてシルフィの封印を解く話など、色々触れるネタ一杯あります。
まぁ、しばらく間はあけますけどね。
読んでる人いるか分かりませんが、楽しみにしててください。
では、次回からはちと違うテーマで攻めてみます。