kanariya022006-03-12

今回は、皆のフロア大戦、炎のドッジボールの中編をお送りします。
中編なので、前回からの続きです。
今回から読み始めてもさっぱりですよ。
また、完結もしないんで、ご注意ください。
では、例の如く…


―――――――――――――――――――――――――――――――――


マックス (よしっ、俺もやるぞ!!)
白組、外野からのパス。
リン姫の方へボールが行ってないのを確認したマックスはキャスのように軽い球に当たって外野へ行こう作戦を決行しようとする。
ボールはネネコの手に。
リン姫 「1割じゃぞ、ネネコ」
ネネコ 「分かってるよ」
誰を狙うかは考えず、真正面目掛けて投げ込むネネコ。
マックス (待てよ、ネネコちゃんって…)
思考が高速で働く。
マックス (ヤ、ヤバイッす!!)
手遅れ。体はボールへ当たろうと動いていた。
『シューーー』
凄い音を出しながら迫ってくるボール。
嫌なことにこんな時に限って視界がスローモーションに見える。
徐々に迫ってくるボール。
マックス (待って、待ってぇ〜!!)
『シューーー』
迫るボール。
『シューーーパシュッ』
ボールはマックスの眼前を通り過ぎ、壁に激突。
壁に黒い焼け焦げたあざをつけ、ポンポンと跳ねる。
マックス 「………………」
ぎりぎり当たらなかったらしい。
ジャッキー 「おい、マックス…」
マックス 「…死ぬかと思った…っす」
目から涙が流れていた。
フォローの入れようもない。
マックスの鼻からはポタポタと血が流れていた。
どうやら鼻をかすっていたようだ。
しかし、当の本人はそんなことに気づかない。気にしている心境ではないようだ。
メグミ 『マ、マックス選手、アウトーーーーー!!!』


−マーク=オーキス→アウト


リン姫 「ネネコ、お主今2割ぐらいは出てたぞ」
ネネコ 「う〜ん、加減って難しいね」
リン姫 「妾も注意せぬとな…」


ゲイル 「ふっ…試合に出なくて心底良かったと思うな」
ルシーエ 「はぁ…」
ルシーエ (皆さん、かわいそう…)


ボールは烈火の手に。
烈火 「よーし、いくぞぉ!!!」
凄い形相でボールを構える。
やる前までやる気無しだった者とはとても思えない熱意の発揮振り。
パッと視界に入ったのはエルティーネ。
エルティに向けて構えを取る。と、
エルティーネ 「やめて、お願い!!」
キラキラと目を輝かせるエルティ。
男心をくすぐる乙女パワーを炸裂させる。
その可憐でいかにもこんな私を狙わないでと訴えかける視線に思いとどまる烈火。
烈火 「ちっ…」
構えを一旦解き、別のターゲットを探す。
エルティーネ (た、助かったぁ〜)
攻撃対象を眺め、じっくり選ぶ策に出た烈火。
怯え腰丸出しの南田、先ほど同様乙女パワーを発揮し座り込んだままのエルティーネ、ホフルの後ろに周り込んで観戦モードのアヤメ。
この辺りは烈火の攻撃対象から外れていた。
烈火 (狙うとしたらやはりあいつらか…)
びくつきながらもキャッチの構えを取っているキリト、構え無しながら微動だにせず攻撃に備えるホフル。
そして、わくわくしながらボールを待っているネネコに、どうせ大したことないだろうとでも思ってるのか腕を組んでジト目で睨みつけてくるリン姫。
その4人に絞っていた。
女を狙うのはポリシーに反する、そう考えた烈火はキリトかホフルにターゲットを絞り込もうとする。
その時、
リン姫 「さっさとせい」
烈火 「なっ」
白組陣地のど真ん中に歩み寄り、
リン姫 「長すぎる。妾が受け止めてやるから投げてみよ」
烈火 「なんだと!?」
リン姫 「聞こえたじゃろ?投げろといっておる」
烈火 「くっ…………」
リン姫 「全力でな。出せる力全てを出すのじゃ」
烈火 「…いいのか?」
ミコト 「ちょっ、烈火さん!!」
リン姫 「愚問じゃな」
烈火 「…わかった」
腕に力を込める。
血管が若干浮かび上がる腕、大きく踏みしめる足。
烈火が大きく見えるかのような錯覚すら起こす程の威圧感を醸し出す。
ピリピリとした感触が張り詰める。
烈火 「……いくぞぉ!!!!」
声が咆哮する。
『ボシュュュューーーーー!!!』
燃える球。
そう、ボールは燃えていた。
『ガオォォォォォーーーン!!』
ヘレナ 「な、なにっ!!?」
江藤 「虎ぁ!?」
そう、炎は虎を模していた。炎の虎として飛び掛っていたのだ。
炎の猛虎がリン姫に襲い掛かる。
リン姫 「………………」
リン姫に直撃した瞬間、強い光が大広間を覆う。
キリト 「くっ…」
烈火 「何ッ!?」
とっさに目を閉じた一同。
目を開けたのはおよそ十秒後。
キャス 「なっ…」
シルビア 「うそ………」
一同が目にしたのは…。
烈火 「アレを…止めた」
リン姫はキャッチしていた。
しかも右手だけで。
リン姫 「所詮はゲーム。妾の守りを崩せるほどでもないわ」
マックス 「化け物…すね」
烈火 「…くそぉ」
膝を地につけ、悔しがる烈火。
ひみろ 「ふふふっ、さすがはオレのライバルだ」
リン姫 「もういいじゃろ、こんなもんで」
ひみろ 「へ?」
ボールを投げ捨てると、場外へと歩いていく。
リン姫 「これ以上、下らぬ遊びには付き合ってられん。妾は抜ける」
ひみろ 「…はい?」
ミコト 「え……?」
大広間から去っていくリン姫。
散々騒がせ、好き勝手暴れてきた姫に一同は見送ることしかできなかった。


−リーン=リィズ=ラードナー→リタイア


ひみろ 「あの…えと……」
ライバル視していたリン姫が抜けたことに思考がついていかずパニックを起こす。
他の者は呆然としたまま。
その状態で数分の時が経過する。
クラノス 「ええと…では試合を再開してくれ」
ボールはホフルに。
ホフル 「行くぞ!」
試合再開、物騒な人が一人去った影響で皆に安心感が出来たのか見事な応酬が展開される。
赤組、白組ともにネネコにだけはボールが渡らぬようにと…。
そんな中、リン姫が抜けたショックをひきづり続け、端でいじけているひみろ。
ラビ 「ひみろ〜、いい加減元気だしなよ〜」
バニ 「試合に集中して!!姫様とはまたどっかでやりあえるから…ね」
必死で説得にまわるラビ達。
ひみろ 「だって〜…だってぇ〜……」
南田、ワンバウンドでボールが自分の元へ来たのを思わず手にしてしまう。
南田 「えっ、あっ、俺!?」
自分は投げることは無いだろうと思っていたのかボールを手にしたことに妙に驚いている。
南田 「ひぃっ、くそぉっ!!」
なぜか目をつぶりながら投げる。
ボールはひみろ目掛けて飛んでいく。
ミコト 「ひみろさん!!」
『パシッ!!』
ボールを見ずに、片手でキャッチ。
ひみろ 「……………」
バニ 「ひみろ?」
ひみろ 「ああもう!!」
すっと立ち上がり、白組に目をやる。ボールを前に突き出したままで。
ひみろ 「そっちのチームで一番強いのはだれだ!?」
じろっとにらみつけるひみろ。どうやら別のライバルを探そうとしているらしい。
皆の視線がホフルに集中する。
ホフル 「あいつだ
左を指差す。皆の目線がそちらの方へと移った。
目線の先はネネコ。
ネネコ 「わたし?」
ホフル 「ああ」
ひみろ 「…………」
突き出した腕を下ろす。
ひみろ 「ネネコ、いくぞ」
冷たい視線が突き刺さる。
ネネコ 「……うん」
ひみろ 「全力で行く、勝負だ!!!」
クラノス 「何ぃッ!!!」
リン姫と同格のひみろが全力で投げる…それが洒落にならないことは聞くまでも無く皆が理解していた。
そして、皆がヤバイと思った。
セフィー 「…………」
スタスタとセフィーがフィールド内に歩いてくる。
『ゴツンッ』
ひみろ 「はぅ…」
ひみろの頭をこずくとひみろをフィールドの外へと引っ張っていく。
ひみろ 「な、何をする!?」
セフィー 「ひみろはお疲れのようなので休ませます」
ひみろ 「ちょっ、離せ!!」
そのまま引きづられ、大広間を出て行く。
一同 「……………」


−ひみろ→リタイア


マックス 「はぁ…なんか生きた心地がしないっすね」
キャス 「重機歩兵で戦ってるほうがまだマシかも…」


バニ 「ネネコちゃんもリタイアさせたほうがいいかもね、こうなると」
りゅい 「難しいな、あの子は自分からやめようとはしないだろうし」
バニ 「んじゃあどうするの?」
りゅい 「どうもしない。様子見♪」
シルビア (止められるのあなたたちだけなんだから止めてよ…)
りゅい達はこの状況を楽しんでいるので止める気はなかった。


試合再開。
エルティーネ、キラキラ乙女パワーを発動させる。
『バシューーーン』
エルティ 「はう……」
ボールはエルティにクリーンヒット。
ミコト 「ご、ごめんなさい。まさかモロに当たるとは思わなくて…」
投げたのはミコトで乙女パワーは通用しなかったようだ。


−エルティーネ=F=ベルジェ→アウト


ボールはアヤメに。
アヤメ 「さて、私もそろそろやらせてもらうわ」
前に歩み寄る。
アヤメ 「ミコト、勝負よ!」
指名、何か因縁でもあるのだろうか?指名されたミコトも驚く様子も無く前に出る。
ミコト 「はい!!」
アヤメ 「受けなさい!!」
周囲も驚くほどの豪速球。
先ほどまでの異常なものではなく、自然なレベルでの凄い球だが、それでもかなり速い。
ミコト 「くっ…」
なんとかこらえ、受け止める。
ミコト 「ヒロインの座は…譲りません!!!」
ネネコ 「ヒロイン…?」
アヤメ 「くぅ…あなたには負けないわ!!」
リン姫やひみろがいるときには間違っても言えないセリフだろう。
勝負してる本人達以外はテンションが下がっているのと、なぜか哀れみを感じていた。
ホフル 「やめろ…」
横に入り、ボールをキャッチする。
ホフル 「哀れだぞ」
南田 「率直だ…」
思わず突っ込みを入れる。
ジャッキー (もちっと言い回しぐらい考えろや…)


ホフル 「行くぞ…」
イールク 「来る!!」
ホフルの投げた球はイールク目掛けて飛んでいく。
『シュバッ!!』
と思いきや、
イールク 「え!?」
烈火 「何、カーブだと!?」
ボールは軌道を大きく変えた。
弧を描くかのように90度近く曲がったその球は烈火目掛けて襲い掛かる。
烈火 「くそっ!!」
ボールの動きにまるっきり対処できず、体を守るべく手をクロスさせるので精一杯。
烈火の腕にボールが当たり、高く跳ね上がった。
烈火 「ぐっ…」
ミコト 「取れる!!」
大きく軽やかに飛び上がると、宙高く飛び上がったボールを空中でキャッチする。
観衆 「おおっ!!!」
ミコトのファインプレイに周囲はわめき立つ。
烈火 「助かったぜ、ミコト」
ミコト 「いえ…」
ミコト (烈火さんがやられるなんて…あの人かなりできる)
ジャッキー 「ミコッティ、ボールをくれ」
ミコト 「はい?」
ジャッキー 「俺に秘策がある」
ミコト 「はぁ…」
しぶしぶボールをジャッキーに手渡す。
ボールを手にしたジャッキーは外野の方を見渡した。
ジャッキー 「キャス、マックス…両サイドに回れ!!」
キャス 「へっ?」
マックス 「俺達がっすか?」
ジャッキー 「俺達イースト8のチームワークを見せてやるぜ」


ジャッキーの秘策、チームワークプレーが発動しようとしている。
さぁ、ちゃんと完結できるのか?
続く。