kanariya022006-03-22

今回はみんなのフロア大戦、狂気の肝試しの中編です。
え〜、ここで語ることもなくなってきたので、ちゃっちゃと行きますね。
中編なので前編を読んでからお読みください。
ではでは、どぞ〜
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クラノス&シルビアペアが林の中を行進する。
第4組、スタートし始めのまだ墓ゾーンにはいる前のポイント。
シルビア「あの…何が起こっているんでしょう?」
クラノス「さぁな…大したことではないだろう」
クラノス(罠を仕掛けたなどという話は聞いていないが…)
彼等はまだりゅい達がお化け役をやっているということを知らない。
『きゃーーーーーー!!!』
クラノス&シルビア「!?」
前方より聞こえる叫び声。
クラノス「これは…メグミか!?」
第3組のメグミの声のようだ。
シルビア「な…何が?」
クラノス「くっ………」
クラノス(これは番外編だ。敵の襲撃などあるはずがない)
クラノス(ただの肝試しだ)
必死でこの先のことを予測しているのか自分を納得させようとしているのかどちらかは定かではない。
が、クラノスは危機を感じ取っていた。
クラノス「いくぞ」
そう口にするも、足取りは遅く警戒に警戒を重ねていた。


ひみろ「くっ、オレの番はまだか?」
セフィー「…皆様は最後の方に回されたのかと」
セフィーの皆様とはひみろ、リン姫、ネネコのことを指している。
ネネコ「え〜、なんで?」
セフィー「皆さんはかなりずれてますから…、ドッジボールの件もありますし」
リン姫「…だが、りゅいやコリンも同様じゃ。あやつらはそうそう止められぬぞ」
ひみろ「そうだ、あいつらは強い」
セフィー「別に戦いに行くのではありませんから…」
第5組のペアが発表される。
江藤「次は…ホフル、セフィー!!」
ホフル「………」
ひみろ「セフィー、任せるぞ」
セフィー「…はい」
ジャッキー「それにしてもまだ誰も帰ってこねぇな」
ヘレナ「そうね、変だわ。さっきから凄い悲鳴が聞こえるし…」
さすがにそろそろ疑問に感じる者も出始める。
ホフル&セフィー、スタートし歩み始めた。
ホフル「何か知っているか?」
セフィー「…何を?」
ホフル「………………」
無言の圧力。
ホフルの視線はセフィーの目に注がれる。
セフィー「………」
セフィー「妖怪と悪魔二人に魔女…」
ホフル「なるほど…そういえばあの場にいなかったな」
集合場所にりゅい達がいなかったことを覚えているようだ。
セフィー「危険がこの先に待ち受ける…」
ホフル「……俺たちがやるしかない」
セフィー「……………」
静かに話す二人。
無口同士なせいか思慮深く、声も低い。
しかし、意志はしっかりと通じていて、お互いに信頼は出来ているようだ。
セフィー「私たちで…」
静かで冷たそうな二人の中に熱い何かが燃えたぎっていた。


クラノスペア。
じりじりゆっくりと進むクラノスとシルビア。
両サイドの林に何か潜んでいないかと注意しながら進む。
その足取りは重く、歩く速度は遅い。
前方に墓地が見える。
シルビア「怖い…」
先ほどからの悲鳴の印象が強く、必要以上に恐怖を感じる。
クラノス「大丈夫だ、心配するな」
こういう時の男は頼りになるもの。
シルビアのクラノスに対する見方も大きく変わっただろう。
しかし、そのクラノスも汗は額から流れ落ちるほど緊張し、恐怖を感じていた。
墓地のゾーンへと入る。
足を一歩二歩と進める。と、
『ボワーーーン』
突如、赤い霧に包まれた。
クラノス「なんだ、これは!?」
ぼんやりと見える墓地。
見えるもの全てに赤が混ざりこむ。
『ヒューーーン』
音と共に、目の前に現れるシルエット。
丸い形をしたそれは宙に浮かび、目の丁度前で止まる。
クラノス「!?」
クラノス、声が出ない。
シルビア「ひっ……」
シルビア「キャァアァァァァァァ!!!」
悲鳴をあげる。
『ドタッ』
そして、地面に倒れこんだ。
クラノス「くっ、しっかりしろ!!」
シルビアを抱え込み、それでも視線は黒いシルエットへ。
クラノス「くっ………」
意識は保てているが、冷静さはまるでない。
完全なる後手へと回るクラノス。
それに対し、黒い亡霊はユラッと動き出した…。


集合場所。
ひみろ、ゆっくりと立ち上がり、どこかへ向かおうとする。
ネネコ「ひみろ、どこ行くの?」
ひみろ「うぐ…」
リン姫「…………」
ひみろ「いや、その、緊張して…散歩にでも」
リン姫「緊張の色など見えぬぞ」
ひみろ「えっ、いや、緊張して…」
ネネコ「ないよ、わたしにだってわかるもん」
ひみろがこっそりりゅい達の元へ行こうとしていることにリン姫とネネコは気づいているようだ。
ひみろ「くっ…」
ひみろ(この二人を撒くのは不可能だ…)
リン姫「セフィー達は殺し合いをするわけではないぞ」
リン姫「それに任せると言ったのにお主はセフィーを信用しておらぬのか?」
ひみろ「………そうだな。心配はない」
リン姫の言葉に自分が間違っていたことを思い知らされる。
ひみろ「ありがとう、感謝する」
リン姫「…ああ」


話はクラノスの方へと戻る。
赤い霧に包まれ、目の前でうごめく黒き亡霊。
クラノスに絶体絶命の危機が迫ろうとしていたその時、
セフィー「下がりなさい」
クラノスの前に立ち、亡霊を睨み付けるセフィーがいた。
少女と共に緩やかな風が訪れ、そして赤い霧を流し去っていく。
どうやら、クラノスペアがゆっくりゆっくりと進んでいる内に後列のセフィーペアが追いついた模様。
黒いシルエットはその姿をあらわにする。
現れたのはりゅいだった。
墓石の上で膝を曲げ、宙座りしているりゅい。
セフィー「…おいたが過ぎますよ、りゅい」
りゅい「うっ……セフィー…」
しっとりと静かなその口調はりゅいには重く怖いものに感じられた。
ホフル「大丈夫か、クラノス?」
セフィーとペアのホフルもしっかりとその場にいた。
クラノス「ああ…なんとかな」
ホフル「そうか」
無事を確認すると、ホフルの視線はりゅいの方へと移る。
セフィー「これは肝試しの域を超えています」
セフィー「…直ちにやめなさい」
りゅい「けけけっ…」
一時はセフィーの目に威圧を感じたが、気を取り直したようだ。
りゅい「戦場で必要な度胸を養うための特訓だろ、これ?」
りゅい「なら、いいじゃねぇか。最高の恐怖を体験しておくってのも」
セフィー「………」
りゅい「…丁度良い機会だ、セフィー。お前も一度体験してみるか」
『シュバッ』
両の手から爪が突き出る。
長い長い爪が。
りゅい「けしし…」
りゅい「ラビ、バニ…やるぞ」
バニ「えっ、私たちも〜?」
墓石の裏に隠れていたラビバニがひょこっと顔を出す。
ラビ「……………」
りゅい「当然だ」
ホフル「セフィー…」
セフィー「分かっています」
セフィーは目を閉じる。
微動だにしない。
セフィー(戦闘プログラム1から20まで)
セフィー(システム開放。開放率100%)
セフィー(ジェネレーター出力最大)
セフィー(エネルギー、ブルーゾーンへ移行)
セフィー(敵行動パターン予測。ラビ、バニ、りゅい)
セフィー(戦闘データ、計算完了)
セフィー(全工程終了。戦闘行動へ移る)
セフィーの眼がゆっくりと開かれる。
ホフル「なっ……」
セフィーの目を見て驚くホフル。
黄緑色に光を放つ瞳。
目と呼んで良いのかわからない程不思議なものであった。
りゅい「くけけ…久々に見たな、それ…」
りゅいの額から汗が流れ落ちる。
バニ「マジだ…」
『ジャラ…』
腕を横に伸ばし、爪をブランブランさせ、
りゅい「…いくぞ!」
『バシッ』
墓石を飛び蹴ると、凄い速さでセフィーに襲い掛かる。
セフィー「戦闘…開始!」
セフィーのその言葉と同時に、
『ドバーーーン!!』
物凄い衝突が起きる。
ホフル「うぐっ…」
強烈な爆風がホフル達に降りかかった。
土煙は上がり、飛んでいく墓石もある。
りゅいの強烈な爪タックル。
しかし、セフィーもしっかりと頑丈な腕で防いでいる。
りゅい「けけけ…」
りゅいの爪攻撃が襲う。
セフィー(攻撃速度、0.06秒。りゅいの方が上)
セフィー(反撃不可能)
攻防が続く。
りゅいの両手から繰り出される爪攻撃。
セフィーは正確にその攻撃を対処する。
しかし、反撃にまでは回れない。
が、十数回もの攻撃で、
ザシャ…』
一回。
一回、爪がセフィーの肩をえぐる。
セフィー「………」
セフィーにはたいした傷ではないが、それを受けたことにより一瞬の硬直が生まれた。
りゅいはその一瞬を見逃さない。
りゅいは顔をにやっとさせ、
りゅい「妖爪乱舞!!」
高らかに上へ上げた爪が強い煌きを放つ。
『シャギンシャギンシャギンシャギンシャ…』
十字の爪痕が墓地全体に刻まれていく。
墓石であろうと、切り裂かれバラバラにはじけ飛んでいく。
りゅい「どうだ!?」
セフィーへの直撃を感じ取ったりゅいは優位であることを疑わない。
取った!そう感じていた。
と、
『シュン…』
りゅいの前に潜りこむ影。
セフィー「損傷軽微、任務遂行に問題無し」
りゅい「お前…」
完全に不意をつかれる。
セフィー「最大出力で…射抜く!!」
『ヴァン!!』
大きく振りぬいた拳はりゅいの腹にモロに入る。
りゅいは大きく勢いよく吹き飛ばされ、墓石にぶち当たる。
セフィー「…はぁ……」
一息ついた後、バニの方へ目をやる。
バニ「あ〜、もう…」
バニ「なんだかわからないけど…」
セフィーに飛びかかる。
バニ「いくよ!!…てりゃ!!」
バニはりゅい程の速さは無いが、足技込みの体術型なので攻撃の予測が非常に困難となっている。
セフィー(右足下段60%、左手聖拳30%)
攻撃の全てが%でしか予測できないために、苦戦を強いられる。
しかし、捉えられない動きではないためりゅいよりは反撃に転じることも出来る。
だが、
セフィー「!!」
バニ「バニィィーーキックゥゥゥ!!」
バニ必殺高速の蹴り炸裂。
前触れ無く、突如として放たれた強烈な蹴りに対処ができない。
セフィー「くっ…」
バニーキックがクリーンヒットする。
ダメージを受け、後ずさりしてる最中にも立て続けに次なる攻撃が繰り出されようとしている。
セフィー(…回避不可能)
セフィー(かわせない…)
『バキィィィィィィ!!』
ホフル「ぐ……」
セフィー「!?」
見ると、前にホフルがいた。
自分に当たるはずのパンチを腕で受けている。
バニ「えっ?」
バニ「あっ…ごめん」
相手がセフィーじゃなかったため、とっさに謝る。
その瞬間、
バニ「って……」
バニの腹に主刀がめり込む。
セフィーが瞬時に回りこんで放った一撃。
セフィー「…………」
倒れこむバニ、それをじっと見つめるセフィー。
一瞬の隙が生まれる。
セフィー「!!」
セフィーの背中にはラビの姿が。
そして、
『ギランッ』
ラビ「…デスサイズ」
突如大鎌を出現させると、手に持ち大きく振り上げる。
『シューーーー』
ラビ「!?」
ラビの体を黄色い粉状の霧が覆っていた。
コリン「黄鱗粉(おうりんぷん)…。痺れ粉ってとこだね」
ラビの背後からの声。
コリンの魔法のようだ。
ラビ「なっ……」
コリン「流石にやりすぎだよ、鎌なんて物騒な」
『ガタン』
体から力が抜け、鎌を足元に落とす。
ラビ「うぐ……」
完全に力が抜け、膝を地に付ける。
セフィー「………………」


セフィー「大丈夫ですか?」
ホフル「ああ、問題ない」
そういいながらも、実はかなり痛い。
ホフル(これがこいつらのレベルか…)
セフィー「あの…」
口ごもる。
セフィー「ありがとうございました」
お礼を口にするのは慣れていないのだろう。
言葉がぎこちない。
ホフル「いや、気にするな」
りゅい「いっつぅ〜〜〜」
バニ「セフィーちゃん、もっとお手柔らかにお願いよぉ〜」
派手にやられたのに、すっくりと立ち上がる二人。
見た目程ダメージは無かったのだろうか。
ラビ『ピクピク』
二人に対し、ラビは麻痺でビクビク震えることしか出来ない。
セフィー「……どうしましょう?」
ホフル「何?」
セフィー「私ここからどうしたらいいのかわかりません」
りゅい達を抑える役を買ってでたはずなのだが、役を果たせず。
りゅい「んで、どうしたらいいんだ?」
セフィー「それは……」
黙り込むセフィー。
ホフル「…………」
クラノスはいまだ気が動転している。
セフィーとホフルは解決法を頭に張り巡らせるのだった。


ラビ「はぁ〜、やっと痺れが取れた」
セフィーと決着がついてから数分のこと。
少し離れた場所で、ホフルはクラノスに事情を説明している。
一方で、
ラビ「なに、あの痺れ粉。無茶苦茶強力じゃん」
コリン「あれ、ボクのお手製だから。世界一強力だよん♪」
ラビ「そんなの使わないでよ〜」
バニ「でもでも、すごい経験できたんじゃない?」
ラビ「う〜〜〜」
そんなたわいも無い話をしていると、
リン姫『…コリン』
テレパシーをキャッチする。
コリン「あっ、リンちゃんからだ」
ラビ「ふぇ?」
セフィー「…!」
コリン『リンちゃん、やっほ〜!!』
リン姫『やっほーじゃない、セフィーがそちらへ向かったはずじゃがどうなった?』
コリン『ん、セフィーちゃんなら丁度ここにいるよ。突破されちゃった』
リン姫『そうか…』
バニ「ねぇねぇ、何話してるのぉ?」
コリン『あっ、ちょ…今リンちゃんと…』
リン姫『…………』
コリン「リンちゃんからテレパシー来てるの」
ラビ「私たちも話に加えてよ」
コリン「え〜〜〜!?」
リン姫『ラビたちか?』
コリン『うん、…よくこっちのことわかるね』
リン姫『そう難しいことではないからな』
リン姫『こちらからではラビ達の正確な位置は把握できん』
リン姫『お主がアンテナを広域に展開し、そやつらもテレパシーに加えてくれ』
コリン『ん、分かった』
眼を瞑り、数秒。
コリン『OK』
セフィー「…………」
バニ「テレパシー?」
リン姫『聞こえておるぞ』
ラビ「すご〜い!!」
バニ「魔法ってすごいね!!」
クラノス「なんだ、どうした?」
ホフル「テレパシー…のようだな」
彼等にはテレパシーは届いていないようだ。
りゅい「で、何の用なんだ?」
リン姫『何の用とか言えるとは…。まぁ、いい』
リン姫『お前達のお化け業にルールを追加する』
りゅい「はぁ?」
バニ「ルール?そんなのないよ〜」
リン姫『追加するといっておるのじゃ』
りゅい「…で?そのルールとは?」
リン姫『…まず、妾、ひみろ、ネネコ、この3名の組以外に対しては一人だけで脅かすようにせよ』
ラビ「一人で?」
リン姫『ようはもっと力を抜けということじゃ』
りゅい「……………」
リン姫『その代わり、妾達には全力で来い』
バニ「全力ぅ〜〜!!?」
リン姫『殺す気でも構わん。それだけの力で来い。そして…』
リン姫『妾達も全力でそれを潰そう』
ラビ「いっ…」
コリン『ちょっ、リンちゃん…それは……』
リン姫『わかったな、ルールは守れよ。言い訳は聞かぬ』
コリン『リンちゃん!!って……』
コリン「コンタクト切られちゃった」
テレパシーが出来なくなったらしい。
バニ「ど、どうするの?向こう本気ってこと?」
ラビ「やばいな…こりゃ」
りゅい「ふっふっふっふっふ…」
バニ「…りゅい?」
りゅい「面白いじゃね〜か。あのお姫様に恐怖というものを叩きつけてやる」
ラビ「やる気なのか…」
コリン「やめといた方が良いよ〜」
りゅい「こっちの方が数は多いんだからな、問題はねぇ」
ラビ(そううまくは…)
コリン(いかないと思うけど…)
コリン(…大丈夫かな?…私達)
コリンに嫌な予感を走る。



さぁ、いよいよ恐怖の逆肝試しスタート。
リン姫、ひみろを相手に耐えられるかりゅい達!?
次回に続く


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はい、中編でした。
後編は明後日です。
次回もお楽しみに〜。